研究実績の概要 |
本研究テーマの最終目標は,Liを利用して年代測定鉱物と深部H2O流体との相互作用を理解し,地殻内の物質循環史を解明することにある.Liは, 深部H2O流体と鉱物との相互作用のトレーサーとして注目されている元素の一つであり,地球マントルの主要構成鉱物であるかんらん石や輝石中のLi濃度やLi同位体組成について既に多くの先行研究がある.年代測定鉱物では,ジルコンについてLi濃度や同位体組成のデータがあるが,数十億年にわたる地殻進化の歴史を地球スケールで理解するためには,ジルコンのみでは不十分である.そこで本研究課題では, 地殻を構成する岩石に広く分布する年代測定鉱物モナズ石に新たに注目し,そのLi濃度や同位体組成を取得して解釈することを目指し,その礎としてモナズ石におけるLi固溶の証明とLi固溶形態の推定を行う.
平成28年度は,①Li分析に関する情報収集,②単結晶合成に使用するシリコニット炉の整備及びモナズ石単結晶合成,③単結晶X線構造解析の準備を行った.①では,文献調査や学会参加により,LA-MFC-ICPMSによってLi分析が可能であることがわかった.②では,長く稼働していなかったシリコニット炉を発熱体点検・温度勾配測定を行うなどして整備し,年度末に単結晶合成を始めることができた.③では,既に持っていた回折強度データを使って一連の解析手順を身につけ,また結晶学会・高エネルギー加速器研究機構主催の講習会に参加して解析時に必須の結晶学の理解を進めた.
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