本研究は、地殻における物質循環史を解明するための新たな方法論を提案すべく、CePO4モナズ石へのLi固溶の証明とそのメカニズム解明を目的としたものである。モナズ石へのLi固溶の直接的証拠となる即発ガンマ線分析は実施見込みが立たず(JRR-3非稼働のため)、合成試料のEPMA分析と構造解析からアプローチしてLi固溶を検証した。 CePO4モナズ石にCa、Sr、Ca+S、Sr+Sを各々ドープする単結晶合成実験(MoO3-Li2Oフラックス法)を実施した。EPMA分析の結果、およそ3000ppmのCaまたはSrが検出されたが、Sは検出限界以下であった。Moも検出されたがCaまたはSr固溶による電荷補償を説明するために十分な量とは言えず(600-900ppm)、EPMAでは分析できないLiが電荷補償に寄与している可能性が示された。構造解析の観点では、ドープ元素の有無に応じて差フーリエ図に違いが見られた。しかし、ドープできたCaやSrの固溶量が想定以上に少なく、希土類元素をドープしたジルコンのケースとは異なって、アルカリ土類元素をドープしたCePO4モナズ石から系統的な構造変化を観測するには至らなかった。そこで、モナズ石構造を持つ無機化合物について分野を問わず広く文献調査を行い、固体イオニクス分野の論文を参考にLiドープ量を変化させた①CePO4、②LaVO4の合成に着手し、単結晶X線構造解析の実施に十分なサイズの単結晶合成に成功している。現在分析を進めている最中ではあるが、モナズ石構造はLiを固溶することが可能であると考えている。今後は天然モナズ石を対象に詳細な結晶化学データの取得を行い、Liに関する地球化学データの取得・年代データとの関係整理を実施、母岩の成因の議論へ繋げたい。
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