研究課題/領域番号 |
16H07443
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
佐藤 大輔 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 博士研究員 (40780086)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 光伝導半導体スイッチ / 電子銃 |
研究実績の概要 |
本研究は、光伝導半導体スイッチ(PCSS)を用いた電界集中型加速方式という新たな加速方式を提案し、軸上加速電界がGV/mを超える高電界で電子を引き出しつつ、数mmの加速距離で空間電荷効果の影響が小さくなるMeV領域までビームを瞬時に加速するという、全く新しいコンセプトの高電荷・低エミッタンス電子銃の開発を目指すものである。 研究初年度は、主に電界集中型加速方式に適したPCSSの製作とその各電気特性の評価を行った。一般に、PCSSの性能は、キャリアの移動度、耐電圧等の半導体基板材料の基本物性に依存している。特に、本研究で実証する電界集中型加速方式には、より高い軸上加速電界を得るために「高耐圧」かつ「速い立ち上がり時間」のスイッチ素子が必要である。そこで、本年度は半導体基板材料として耐電圧が比較的高く、電子の移動度が高いガリウムヒ素(GaAs)基板を採用し、物質材料研究機構(NIMS)微細加工プラットフォームの設備を利用してPCSSの開発を行った。開発プロセスとしては、まず、GaAs基板上に高速マスクレス露光装置を用いて電極構造をパターニングし、その上から金などを12連電子銃型蒸着装置で蒸着して電極構造を製作した。高圧ジェットリフトオフ装置でリフトオフした後、電極と当該基板をオーミック接合とするため基板のアニールを行い、最後にプラズマCVD装置を用いて基板表面にSiO2の絶縁膜をコーティングし、スクライバーを用いて切り分けてPCSSは完成した。 作成したPCSSは、KEKにて直流高電圧を印加し、スイッチ素子単体で暗電流抵抗測定やON抵抗測定を実施し、応用に向けた基本的な電気特性の評価を行った。その結果、20kV/cm以上の耐電圧特性をもち、ON抵抗が約20Ωで高速駆動するPCSSが製作できていることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光伝導スイッチ自体の開発と電気特性評価は、順調に進んできたが、スイッチ素子の立ち上がり時間が想定性能(サブピコ秒程度)に満たないため、本年度予定していた電界集中方式による高電界発生モジュールの開発と原理実証まで到達しなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、光伝導スイッチの立ち上がり時間を高速化するため、レーザーのパルス幅を短パルス化するなどスイッチ駆動条件の最適化を図る。その作業と並行して現在製作できているスイッチ素子を複数個用いてブルームライン線路やマルクス回路による高電圧発生実験を実施し、電界集中方式の実証実験に必要な前段試験を実施し、必要なデータ収集を行う。最終的には、前述の各種測定結果をもとにして電界集中型加速方式の原理実証機を製作し、ビーム加速実験まで実施する。
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