1)器官誘導能をもつ毛包上皮幹細胞の同定と器官誘導の分子機構の解明のため、こ毛包上皮性幹細胞の存在するバルジ領域から取得した細胞を培養、増幅技術を確立した。器官原基法による機能解析から、増幅されたこれらの細胞集団は毛包形成能を有していることが明らかとなった。また、FACS解析から、増幅後の細胞では毛包上皮性幹細胞領域マーカーであるCD34/CD49f両陽性細胞集団が増加していること、この集団中に複数のサブポピュレーションが存在することを明らかとし、器官誘導能をもつ毛包上皮幹細胞候補となる細胞集団を特定した。 2)毛包上皮幹細胞の未分化性と増殖能を制御する分子機構の解明のため、バルジ細胞の分化状態を制御する培養条件を確立した。上記1)の培地条件からEGFを除いた培地では、培養後CD34/CD49f両陽性細胞集団が減少し、毛包下部領域の分化マーカーが上昇することを明らかとした。また、EGF不含培地にWntリガンドおよびNotchリガンド、Tgfbシグナル阻害剤を加えた培地では毛包上部分化マーカーの発現が遺伝子、タンパクレベルで誘導されることを明らかにした。これらのことから、器官誘導能を持つ毛包上皮性幹細胞の未分化能と増幅にはEGFシグナルが関与していることを明らかにした。 3)毛包上皮幹細胞の臨床応用へ向けた技術開発については、上記1)で確立した方法を一部改変することにより、ヒト頭皮毛包由来細胞を培養、増幅させる技術を開発した。増幅後の細胞ではマウス由来細胞と同様にCD34/CD49f両陽性細胞集団および両陽性細胞中のサブポピュレーションの増加が認められた。さらに間葉系幹細胞を含む毛乳頭細胞の培養系を確立した。これらの培養毛包上皮細胞および毛乳頭細胞を用いることにより、マウス皮内において天然のヒト毛包と同等の毛包を再生することに成功したことから、計画は達成された。
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