研究課題/領域番号 |
16H07470
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
木下 佐和子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (70778761)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 地震波速度構造 |
研究実績の概要 |
本研究はレシーバ関数解析・レシーバ関数のインバージョン解析を用いて、関東・中部地方でプレートが二重に沈み込む領域における地震波速度構造からマグマ供給系を議論することを目的としている。今年度は、まず必要なデータのコピーと切り出しを行った。関東・中部地方において防災科学技術研究所が公開しているHi-net、F-net観測網、東京大学地震研究所と気象庁が富士山と浅間山周辺に展開している観測網、Victoria大学がニュージーランド北島のトンガリロ火山帯に展開する観測網から、規模が大きい遠地地震波形の実体波の部分を切り出した。次に、観測点密度が非常に高い富士山周辺のデータを対象に、レシーバ関数とNishida et al. 2008による表面波分散曲線を用いて同時インバージョンを行った。富士山の周辺の観測点では、レシーバ関数の2から3秒付近に顕著な負の振幅があり、その振幅を説明するためには、約20kmの深さにS波低速度層が必要である。ところが、本研究で採用している表面波分散曲線には、局所的に存在する顕著な低速度領域は含まれていないため、深い領域に感度があるレーリー波の分散曲線が、インバージョン結果とモデルで合わなくなる。そこで、浅い部分に感度が大きいラブ波の分散曲線のみを使用して、レシーバ関数と同時にインバージョン解析を実施した。その結果、レーリー波とラブ波両方を使用した時と同様に、富士山の下には横方向に約40km、深さ方向に約20kmの大きさのS波低速度領域が存在することがわかった。また、富士山と比較するためにニュージーランドのルアペフ火山において、予備的な解析を行った。その結果、富士山同様に火山下約20kmに低速度層の存在を表す特徴と、プレート境界面におけるレシーバ関数の局所的な振幅の低下を見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
富士山周辺のデータに対して、改良したインバージョン手法を用いたところ、当初予想していたよりも複雑なふるまいをしたため、多くのパラメータを変えて計算を行い、詳細に検討する必要がでた。そのため、論文執筆作業が遅れてしまった。しかし、ニュージーランド・ルアペフ火山のデータ解析は順調に進み、富士山と同様の特徴を発見することができた。
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今後の研究の推進方策 |
関東・中部地方の広範囲の地震観測網においてレシーバ関数を計算し、その振幅断面図から、地下に沈み込むフィリピン海プレートの形状を明らかする。さらにインバージョン解析によって地下のS波速度構造を求める。また、1年目に検討したインバージョンアルゴリズムを富士山、ルアペフ火山に適用し、S波速度構造を計算し、それぞれの火山帯において地下のマグマがどのように分布しているか明らかにする。
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