今年度は関東・中部地方における地震観測網のデータを用いてレシーバ関数のインバージョン解析を実施した。これまでの解析で、本領域において地下40-50kmの深さに地殻とマントルの境界を表す顕著な速度境界面を発見していたが、インバージョン解析の結果、伊豆半島では、IBM弧の地殻の厚さは約40kmの厚さまで成長していること、通常の海洋プレートが沈み込む場所には海洋性地殻がS波低速度領域としてイメージングされることがわかった。また、ニュージーランド・ルアペフ火山におけるレシーバ関数のインバージョン解析を実施した。ルアペフ火山周辺の観測点で求めたレシーバ関数には富士山同様、到達時刻約1から3秒付近に大きな負の振幅があり、S波の低速度領域があることが予想された。1年目に検討した手法を用いて、インバージョン解析を実施したところ、S波速度が2.5km以下の低速度領域が地下約25kmの深さに約鉛直方向10kmの幅で存在することがわかった。観測点が十分でないため、この低速度領域の全体像は不明であるが、少なくとも、水平方向には30km以上の広がりを持っていると考えられ、下部地殻には流体成分に豊富な領域が火山帯の外まで続いていると解釈した。以上の結果から富士山とルアペフ火山では、地殻とマントルの境界付近にS波低速度領域が存在することが明らかになった。一方、浅間山のデータを用いたレシーバ関数解析に関しては、予備的な解析の結果、さらなる解析と議論が必要であると判断し、引き続き論文化に向けて解析を行っている。
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