研究課題/領域番号 |
16H07474
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高木 悠友子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (50783669)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 感染症 / 遺伝子 / 創薬標的 |
研究実績の概要 |
顧みられない熱帯病の一つであるシャーガス病は、病因原虫のクルーズトリパノソーマにより引き起こされる。罹患者の4 人に1 人はその後数年から数十年にわたる潜伏期間を経て慢性期症状を発症し、心臓合併症などにより突然死に至る。中南米ではこれにより年間12000人が死亡し、日本にも移民を中心に約4000人の罹患者がいると推定されている。シャーガス病の治療薬としては主に二種類の薬剤が知られているが、いずれの薬も強い副作用が発生し、しかも慢性期の患者が完治する確率は2割に留まる。このため、副作用の少なく慢性期にも有効な新たな薬剤の開発が強く求められている。 上記の現状を踏まえ、クルーズトリパノソーマにおいて将来の創薬に繋がるような創薬標的遺伝子の探索を行うのが本研究の目的である。当該原虫は代表的なモデル生物とは異なる細胞機構をもっており、RNA干渉が機能しないなどの理由から遺伝学的手法の確立が遅れていたが、近年CRISPR/Cas9を利用した遺伝子改変がトリパノソーマ科の生物においても有効であることが示された。これを受け、28年度はCRISPR/Cas9によるノックアウトのルーチン化に向けて原虫株の作成ならびに核酸導入を効率的に行える条件の検討を行った。その結果、Cas9を安定的に発現する原虫株を使用した蛍光タンパク質を標的としたコントロール実験において、コンスタントに9割以上の原虫の標的シグナルを消失させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子ノックアウトをルーチンで行える環境はすでに整備されている。当初提案した手法よりも簡便なプロトコルで遂行できるようになり、この点においては当初の計画以上に進展している。ただし、蛍光シグナルの検出による自動計数プログラムを原虫の増殖モニタリングに利用する提案については、想定よりシグナルが微弱であったことから手法を工夫する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、近縁の原虫ブルーストリパノソーマにおいて必須とされる遺伝子をクルズトリパノソーマでノックアウトし、創薬標的として妥当であるかの評価をする。創薬標的となり得る遺伝子が特定された場合、タンパク質を大量発現するためのクローニングを行い、結晶構造解析などへ繋げることを目標とする。
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