グリコーゲンは骨格筋や肝臓に存在する糖質のエネルギー源であり、日常生活や運動時にエネルギーを供給する役割を担っている。また近年、グリコーゲンは単にエネルギー源として存在するのみならず、グリコーゲンの増減がエネルギー代謝を調節すると指摘されている。体内のグリコーゲンが相対的に少ない時間帯である早朝空腹時に運動すると24時間の脂肪エネルギー利用が増大することが報告されているが、その背景としてグリコーゲンが一時的に大きく減少したことが要因の一つだと考えられている。 グリコーゲンを評価する方法として従来は組織を直接採取して分析する侵襲的な方法が用いられていたが、近年は炭素磁気共鳴分光法(13C-MRS)による非侵襲的な評価方法が考案されたことで身体的な負担を最小限にしながらグリコーゲンの評価が可能となっている。13C-MRSは大型の設備が必要であることから、わが国では1つの施設のみでの運用にとどまっており、測定対象も骨格筋に限定されていた。侵襲的な方法では困難であった肝臓のグリコーゲン評価に13C-MRSを応用することができれば、さらに貴重な情報が得られると考えられる。本研究は13C-MRSによる肝臓のグリコーゲン濃度の評価方法を確立し、早朝空腹時に運動することが1日のグリコーゲン濃度に及ぼす影響を検討した。 既知の濃度で作成した数種類の基準溶液および健常男性を対象とした肝臓のグリコーゲン濃度測定によって13C-MRSの条件検討を行った。座りがちな1日における肝臓グリコーゲン濃度の変動を検討し、早朝空腹時は肝臓のグリコーゲン濃度が低い時間帯であることを確認した。その後、早朝空腹時または夕方に同じ運動を行った際の1日のグリコーゲン濃度の変動を検討した結果、夕方に運動する条件に比べ早朝空腹時に運動すると1日を通して骨格筋および肝臓のグリコーゲン濃度が低いことが明らかとなった。
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