研究課題/領域番号 |
16H07477
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
藪野 正裕 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 研究員 (70777234)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 超伝導単一光子検出器 |
研究実績の概要 |
本研究では、単一ピクセルの単一光子検出器を用いて光子の位置検出を実現する時間分割多重単一光子イメージング技術の開発を目標としている。超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SSPD)は高い検出効率に加えて、タイミングジッタが数十psと小さく、アフターパルスが無いという優れた時間応答特性を備えた単一光子検出器である。そのため、光子をその位置情報に応じて時間軸上に配列することができれば、SSPDでの光子検出時間から光子の位置情報の復元が可能となる。本年度は、SSPDを用いた時間軸上に配列した光子の識別検出の実証を目的に、AWG分光器と多チャンネルファイバ時間遅延装置を用いた波長-時間変換システムを開発し、時間軸上に分光配列された光子の識別検出に取り組んだ。 まず任意可変スペクトルフィルタを用いてフェムト秒パルスレーザー光源からの光子のスペクトル形状を整形した後、単一光子レベルの強度に減衰し、これを波長-時間変換システムの入力光とした。波長-時間変換システム内で光子は波長毎に異なる時間遅延を与えられた後に一本の光ファイバから出力される。これにより光子の波長スペクトルが時間スペクトルに変換される。波長-時間変換システムからの出力光をSSPDを用いて検出し、時間相関信号計数器を用いてパルスレーザー出力から光子検出までの時間ヒストグラムを測定することで光子の時間スペクトルを得た。その結果、時間スペクトルは光子の波長スペクトルと一致する形状を有しており、時間軸上に配列された光子の識別検出が実証された。また本装置は単一ピクセルのSSPDを用いた単一光子の分光検出システムとして、量子光学などの分野で応用できるものと考えられる。 本年度はまた位置-時間変換システムの開発に必要となるマイクロレンズアレイと光ファイバアレイを用いたマルチポジション光ファイバ結合モジュールの設計・制作を行い、これを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、開発した波長-時間変換システムとSSPDを用いて、時間軸上に分光配列した光子の識別検出に取り組み、時間分割多重化によりSSPDでの検出時間から光子を識別可能なことを実証できた。また位置-時間変換システムの主要構成要素であるマルチポジション光ファイバ結合モジュールの設計・制作も完了した。これにより時間分割多重単一光子イメージングシステムの構成に必要な要素技術をそろえることができたことから、研究はおおむね順調に進展しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度開発したマルチポジション光ファイバ結合モジュールと多チャンネルファイバ時間遅延装置を用いて光子の位置-時間情報変換システムの開発を行い、SSPDと組み合わせることで時間分割多重単一光子イメージングシステムの構築に取り組む。 また時間分割多重単一光子イメージングシステムの評価に用いる光学系の構築も進める。 最終的には、これらを組み合させて時間分割多重化による単一ピクセルのSSPDを用いた光子の位置検出技術の実証を目指す。
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