研究課題/領域番号 |
16H07480
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研究機関 | 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 |
研究代表者 |
蝶 慎一 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 助教 (50781548)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 教育学 / 厚生補導 / 学生支援 / 歴史研究 / アーカイブ / 米国 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後初期の学生支援がどのように扱われ、議論され、具体化されていたのかを、米国の影響を視野に入れながら日米双方の新たな史資料を発掘、収集し、それらに基づいて歴史的、実証的に明らかにすることを目的としている。当該年度に得られた分析の成果を踏まえ、戦後初期の学生支援をめぐる実態及び特徴として、(1)各大学等で学生支援の実務に関わる学生担当職向けの「研修会」(全国レベル、地域レベル)が開催されていたこと、(2)学生支援に詳しい米国人講師・指導者が来日し、上記の「研修会」を含む研究会、協議会といった取り組みに関与していたこと、また、当時の米国では、学生支援で用いられていたとされる声明文が存在していたこと、が明らかになった。加えて、(3)日米では学生支援に関係する概念、用語が複数使われていたことも確認できた。以下、当該年度の主な具体的な研究成果は3点である。 第1に、学生担当職向けの全国レベルの「研修会」の実態分析では、東北大学史料館、東北大学附属図書館を訪問し、「研修会」の実施報告書、開催に係るメモ文書等を新たに発掘、収集できた。戦後初期に学生担当職の養成の一環として開催された「研修会」の目的、扱われた講習内容、講師や参加者の詳細を考察した。 第2に、米国人講師・指導者らの関与の実態、影響の分析では、米国バージニア州ノーフォーク市にあるマッカーサー記念館を訪問し、「ヘレン・ホスプ・シーマンズ文書群」、「ドナルド・ニュージェント文書群」を発掘し、収集できた。 第3に、米国学生支援の歴史に関する研究文献や関係団体の報告書等の収集を行った。これにより、当時の米国では「Student Personnel Service(SPS)」の概念が広く普及していたことも分かった。 以上の成果より、現代日本の学生支援の理念や活動内容を歴史的な視点から再考するための基礎的な知見が提供できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の本研究の進捗については、研究課題である(1)学生担当職向けの全国レベルの「研修会」の実態分析、(2)米国人講師・指導者らの関与の実態、影響の分析、の2点において、日米双方で順調に新たな史資料を発掘、収集することができ、それらに依拠した分析、検討を行うこともできた。加えて、(3)米国学生支援の歴史に関する研究文献や関係団体の報告書等も体系的に調査し、収集することができ、平成29年度の分析に結実できると考えている。 こうした研究成果の一部は、大学行政管理学会第20回大会 定期総会・研究集会(慶應義塾大学、2016年9月11日)で「『学生支援』をめぐる教職員の能力開発―戦後初期の「研修」の取り組みに着目して―」と題して発表した。また、日米の学生支援に造詣の深い若手研究者や現職の大学職員の方々と本研究の進捗や進め方について意見交換の機会(2017年3月12日)を持つことができた。 ただし、米国マッカーサー記念館で発掘、収集できた史資料数が予想以上に膨大であり、それらの読解に時間を要している。引き続き、内容の理解、分析を推進させていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、当初の研究計画の通り、(1)戦後初期の学生支援に関する地域レベルの「研修会」の分析を進める。そして、(2)米国学生支援の声明文の概要、特徴とその影響の分析を行う。平成28年度と同様、日米双方の大学等での史資料、関係文書の発掘、調査、収集とそれらに基づく分析を行う。以下、具体的な推進方策である。 (1)地域レベルの「研修会」の実態が詳細に把握可能な史資料が所蔵されている京都大学大学文書館で調査するとともに、平成28年度の調査で関連する史資料が大阪大学附属図書館にも残されていることが新たに確認できたことから、上記2大学で収集する。 (2)米国学生支援の声明文を策定した団体(ACPA、NASPA)の関係文書が所蔵されているオハイオ州のボーリング・グリーン州立大学「National Student Affairs Archives」を直接訪問し、議事録史料を中心に収集する。その際に、現地のスタッフに関係する情報を伺う。同時に、他大学等のデジタルアーカイブでの調査も試みる。 なお、本研究で得られた分析結果、知見は、論文投稿、学会発表等により公表する予定である。
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