本研究は、近現代日本における新宗教系高等教育機関とその宗教団体との関係性を、高等教育機関・宗教団体双方の視点・資料から、比較的・歴史的に明らかにするものである。明らかにすべきこととしては、(1)新宗教が高等教育機関を必要とした理由、(2)高等教育機関が教団にたいしてなした貢献、(3)非大学の高等教育機関の位置づけ、を設定している。 平成29年度(2年目・最終年度)においては、平成28年度に引き続き必要な資料をさらに収集することを通じ、得られた知見を総合し、学会発表等を行うことでその成果を社会に発信した。 具体的には、(A)新宗教系高等教育機関がいかなる理由によって設置されたのかを、歴史的に宗教間の比較を通じて明らかにした。その結果、信者への一貫教育の論理、専門的職業教育の論理、学術研究の論理という、三つの設置理由のパターンを見出すことができた(上記課題の1および3に対応)。 (B)また、各高等教育機関の組織と制度を宗教間で比較することによって、それら機関の多様性を示した。公的な文書における目的規程、教学組織(学校)、経営組織(学校法人)、財政的支援のそれぞれにおいて多様性があり、天理大学のような理念型に近い事例が存在することなどを見出すことができた(上記課題の1および2に対応)。 (C)そして、新宗教の事例の検討を通じ、宗教専門職とその養成がいかなるものであるかを明らかにした。その結果、宗教専門職はその養成制度、および宗教団体の社会的性格と深く結びついていることが分かった(上記課題の2および3に対応)。
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