研究課題/領域番号 |
16H07488
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
橋本 遼太 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, 学芸員 (20782840)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 美術史 / 絵巻 / 肖像 / 鎌倉 / 禅律 |
研究実績の概要 |
本研究は、制作年の明らかな基準作例(おもに絵画)の作品調査により、鎌倉時代~南北朝時代のやまと絵の様式展開について考察するものである。とりわけ、14世紀の年記がある作例を中心に調査研究を進める。その際、京都や奈良と鎌倉地域の人物の往還を視野に入れ、作品を取り巻く人物や文物の交流に注目、そのうえで様式の伝播・展開の具体相を考察する。 調査研究を進めるにあたり、調査対象をいたずらに拡げ分析が困難になってしまう事態を避けるため、以下の4つの資料群をさしあたり想定している。第1に京都天龍寺を中心とする禅宗寺院、第2に高階隆兼を中心とした宮廷絵所、第3に奈良興福寺を中心とした南都絵所、第4に鎌倉地域を中心とした律宗寺院、である。そのなか、各群で共通して基準作例を有する画題(肖像画や絵巻、仏画)を軸に、分析対象作品を選定した。なお、分析対象には、絵巻や掛幅装形式の絵画のみならず、彫刻作品を安置する厨子内に描かれた絵画をも含んでいる。この点は本研究の特色のひとつであり、絵師個人の伝記的研究では見えてこない、木仏師との協働関係や施主との受注関係が浮き彫りにできることを期待している。 以上のように、制作主体が異なると想定される4つの作品群について、相互に様式比較を行うことで、絵師の活動の範囲(地域差)を推定し、なおかつ同一群内で制作時期の異なる作品間の比較を行うことで、時代による様式の変化(時代差)を考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査研究を進めるにあたり、次の4つの資料群を設定した。具体的には、第1に京都天龍寺を中心とする禅宗寺院、第2に高階隆兼を中心とした宮廷絵所、第3に興福寺を中心とした南都絵所、第4に鎌倉地域を中心とした律宗寺院である。 2か年計画の初年度にあたる28年度には、各群少なくとも5件の作品を調査する予定でスケジュールを考えたが、時間的な制約から、計画通りには調査を実施できなかった。その分、初年度は文献研究の比重を重くすることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、基準作例の実査とデータ整理を行う。29年度には実査をより精力的に進め、各作品群から少なくとも10件ずつのデータを収集したい。基準作例の残存状況から、多少の偏りが出ることも考えられるが、ひとつの作品群について概ね十年ごとに基準作例のデータを集めることを目標にする。これにより、分析にあたって様式の年代差を考察する材料が得られることになろう。 また、絵画作例の調査と並行して、文献資料の解読により人的交流の把握に努める。とくに実査を行った作品については、その作品を取り巻く人物関係を整理し、他の資料群と人物の交流があるかどうかについても検討を加える。 文献資料などによって整理した関連人物の動向や思想に、実査調査から得られた絵画様式に関する知見を重ね合わせて考察を行い、図像や様式の伝播・展開の具体的な様相を明らかにしたい。
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