生分解性ポリマーをベースとしたASO内包ミセルの調製のため、親水性の保護層であるポリエチレングリコール(PEG)セグメント、温度応答性セグメントとして生分解性のあるポリアミノ酸由来のポリマー、ポリカチオン性ポリアミノ酸を有する三元系ブロック共重合体の合成を検討した。前年度にポリアスパラギン酸(PAA)の骨格へのアミノアルコールの反応は、ポリアミノ酸主鎖の分解が主に見られ、温度応答能が得られなかったため、今年度は分解性の低いポリグルタミン酸(PGA)骨格を使う検討を行った。条件検討と温度応答能の検討のため、PEGやポリカチオンを含まないPGA高分子へのアミノアルコール導入を検討した。反応温度、反応時間、溶媒の検討を行ったが、導入率が40%程度に止まり、4 °Cで水溶性が得られなかず、本目的には不適であると判断した。 そこで、アミノアルコール導入に変わる温度応答セグメントの検討を行った。他の温度応答ポリマーとして知られるPNIPAMやポリオキサゾリンのようにN-アルキル基を用いることで、溶媒との水和性や疎水性を目的の機能に調節することができると考えた。ジアルキルアミノ基をPAAの側鎖に導入するアミノ化反応を行ったところ、こちらは定量的な導入がNMRにより観察された。中でも ジブチルアミノ基を導入したポリアミノ酸は水溶性があり、構造的に疎水性が予測されることから、目的のポリマーとなることが期待される。合成したポリマーの0.1 wt%水溶液を作成し、温度を変化させて散乱光強度を測定したところ、25 ºC付近での相転移が観測された。続いて、PEG-PAAジブロック共重合体でジブチルアミノ基導入ポリマーの温度応答能を測定すると、同じく25 °C付近での相転移が観測され、本研究の目的の温度応答セグメントとして利用できることが期待される。
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