研究実績の概要 |
加齢により高齢者は身体機能や認知機能において一定のパフォーマンスの低下・喪失を経験する。また、加齢による変化は身体・心理的側面のみならず、退職や配偶者との死別、孫の出生などの社会的側面においても生じる。このような変化は直ちに深刻な問題を引き起こさなかったとしても、それがきっかけで高齢者は自己の老いを認識することになる。高齢者が自己の老いを主観的に自覚する老性自覚は、心身の健康に影響しうる重大な因子とされている (Steverink et al., 2001; Wurm et al., 2013)。本研究の目的は、老性自覚の認知機序について、磁気共鳴機能画像法 (functional magnetic resonance imaging: fMRI)を通して神経生理学的に明らかにすることである。 初年度であった平成28年度には、fMRIによる脳機能測定実験に用いる課題として、実験的に高齢者に老性自覚を生じさせるための課題「老性自覚課題」の準備を行った。実験で提示する言葉刺激(老いを連想させる「老い語」および老いとは関連のない「非老い語」)を選定するために、若年者および高齢者100名に対して予備調査を行った。その結果をもとに、「老い語」と「非老い語」を選定することができた。また、fMRI実験で行う課題プログラムを作成し、老性自覚課題の準備が整った。2年目の平成29年度には、この課題を用いてfMRI実験を実施する予定である。
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