研究課題/領域番号 |
16H07499
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
若山 勇紀 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (70782853)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 血管新生 / 蛍光生体イメージング / VEGFR2 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究では、血管新生過程において先導端内皮細胞の一方向性移動がどのようにして制御されているのかを明らかにするために、ゼブラフィッシュを用いた蛍光生体イメージング解析を行っている。研究代表者は血管新生因子Vascular endothelial growth factor (VEGF) / VEGF受容体 (VEGFR2) シグナルに注目し、「血管新生過程の先導端内皮細胞ではゴルジに局在するVEGFR2 が先導端に選択的に輸送される仕組みがあり、それによりVEGF/VEGFR2 シグナルが先導端で強く活性化し、先導端内皮細胞の一方向性移動を促進している」と仮説を立て検証を起こった。 移動する内皮細胞のゴルジに局在するVEGFR2 が先導端に輸送される機構の存在を同定するために、VEGFR2に蛍光タンパク質を融合したVEGFR2-FPを用いて、VEGFR2の輸送の可視化を試みた。しかし、VEGFR2-FPは内在性のVEGFR2と異なる局在を示したため、VEGFR2の輸送を可視化することができていない。VEGFR2の免疫染色を行うことでゴルジに局在するVEGFR2が先導端へ輸送される機構の同定を試みた。VEGFR2がどのようにして前方に局在しているか検討するため、創傷治癒アッセイにおいて微小管重合阻害剤で処理するとVEGFR2の前方への局在が阻害されたことから、VEGFR2は微小管に沿って前方に輸送されていることが示唆された。 生体内において、Vegfr2がどのようにして輸送されているか検討するために、キネシンファミリーKif13baに注目した。kif13baノックアウトフィッシュを樹立し、解析した結果、kif13ba ノックアウトフィッシュでは中脳静脈の形成が遅延した。今後、kif13baノックアウトフィッシュでは、中脳静脈でVegfシグナルが抑制されているのか検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先導端内皮細胞では、VEGFR2がどこに局在するのか検討するために、VEGFR2に蛍光タンパク質を融合したVEGFR2-FPの作成を試みた。VEGFR2のC末端やN末端のシグナル配列の下流等蛍光タンパク質を挿入する場所や蛍光タンパク質の種類を検討したが、内在性のVEGFR2とは異なる局在を示した。先導端内皮細胞で細胞表面に局在するVegfr2がVegfAaと結合し、エンドサイトーシスされる様子を可視化することで、細胞膜に局在するVegfr2がどこに多く局在するのか検討するために、VegfAaにmCherryを融合させたVegfAa-mCherryをヒートショックプロモータ下でゼブラフィッシュの全身に発現させた。内皮細胞にVegfAa-mCherryがVegfr2依存的に取り込まれているのを確認した。しかし、VegfAa-mCherryのシグナルが先導端内皮細胞の先端で形成されはじめるか、光シート顕微鏡を用いて観察したが、予想とは異なり、先導端内皮細胞の先導端でVegfAa-mCherryのシグナルが形成され始める様子を観察できなかった。おそらく、VegfAa-mCherryがエンドサイトーシスにより先導端内皮細胞に取り込まれ、エンドソームに蓄積されたVegfAa-mCherryを観察しているためであると考えている。また、VegfAa-mCherryの小胞は先導端内皮細胞内で素早く動いており、また、長時間存在しているため、VegfAa-mCherryのシグナルを観察することで、Vegfr2の局在を間接的に可視化することができなかった。Vegfr2の免疫染色を行うことで、in vivoでのVegfr2の局在の可視化を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、in vivoにおいてVegfr2がどこに局在するのか検討するために、抗Vegfr2抗体の作成を試みたが、ゼブラフィッシュでVegfr2の免疫染色を行える抗体は作成できていない。先導端内皮細胞のどこにVegfr2が多く局在するのか検討するために、低分子量のタグをC末端に融合させたVegfr2を血管内皮特異的に発現させ、タグの免疫染色を行うことで、Vegfr2の局在を検討する。Vegfr2が特異的な局在を示すのか検討するために、他の受容体型チロシンキナーゼについても同じ方法を用いて可視化を試みる。また、Vegfr2が先導端内皮細胞の先端で活性化しているか検討するために、カルシウムシグナルを指標として、観察を行う。 kif13baノックアウトフィッシュでは中脳静脈での血管新生の遅延が見られたが他の組織では血管新生に顕著な影響は見られなかった。kif13baをノックアウトすることにより、genetic compensationが起こり、他のキネシンファミリーの発現が上昇することで血管新生が誘導されている可能性がある。現在、キネシンファミリーに属するkif13a、 kif13bbのノックアウトフィッシュを樹立中である。kif13a 、kif13ba、kif13bbを同時にノックアウトすることで血管新生が顕著に阻害されるか検討を行う。 上記の研究を遂行することで、血管新生過程の先導端内皮細胞で、ゴルジに局在するVegfr2が前方に向かって輸送されているのか、先導端内皮細胞の移動に重要なのか明らかにすることで、血管新生促進因子だけでなく、受容体の輸送制御が血管内皮細胞の移動に重要であるという新規の血管新生制御機能の可能性を提示する。
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