研究実績の概要 |
現在、ヒト・動物・環境を含めた薬剤耐性菌の蔓延が問題となっている。イヌ・ネコ等の伴侶動物はヒトと密接な関係を持ち、薬剤耐性菌が双方向に伝播しうるため、多様な生活背景を持つ収容動物の調査は、薬剤耐性菌の汚染指標となりうる。 本研究では、収容動物(イヌ・ネコ)を対象としたβラクタマーゼ産生菌の保有調査を実施した。イヌ151頭中22頭(14.6%)、ネコ182頭中20頭(11.0%)からβラクタマーゼ産生菌が検出された。動物の個体情報と菌保有の統計解析から、収容されるまでの生活背景に関わりなく保菌していることが分かった。ESBL産生菌はイヌ8頭、ネコ14頭、AmpC産生菌はイヌ15頭、ネコ6頭から検出された(イヌ1頭はESBLおよびAmpC産生菌保有)。カルバペネマーゼ産生菌は検出されなかった。多様な耐性遺伝子が検出されたが、CMY-2, CTX-M-14が優勢であった。分離菌のPFGE型も多様であった。また、βラクタマーゼ産生菌の33%がキノロン耐性を同時に示した。これは伴侶動物およびヒトの感染症治療に影響を与える知見である。 得られた結果より、多様な生活背景を持つイヌ・ネコが高率にβラクタマーゼ産生菌を保有し、その耐性遺伝子型には国内での医療環境、健康なヒト、畜産動物、環境における頻出遺伝子型が含まれることが分かった。これはヒトと伴侶動物間での薬剤耐性菌の伝播や、ヒト・動物・環境における多様な薬剤耐性菌の蔓延を示唆するものである。
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