本研究では、性感染症を引き起こすことが知られている性器ヘルペス (Herpes ximplex virus-2; HSV-2) 感染に対する生体防御機構の解明を目指しており、ウィルスが頻繁に複製することにより患者の QOL を著しく低下させることが問題となっている。また、他の性感染症を誘導する病原体の侵入や病態発現に大きく関与しており、宿主の生体防御機構の仕組みを理解することが新たな治療方法の開発に繋がると考えられる。昨年度までに、HSV-2 弱毒株 (チミジンキナーゼ欠損株) 膣感染 5 週間後のマウス膣粘膜組織には、組織局在型 CD4 陽性メモリー T 細胞や抗原提示細胞を中心とした凝集塊 (クラスター)が膣上皮粘膜組織に接触する形で形成していることを見出している。そこで、昨年度に引き続きこのようなクラスターがどのように維持されているのか作用機序について解析を行った。HSV-2 弱毒株感染 5 週間後のマウス膣粘膜組織から RNA を調製しRNA-seq により網羅的遺伝子解析を行った。その結果、RNA-seq 解析によってもウィルス由来産物は検出されなかった。また、ヘルペスウィルスはその遺伝子の発現が三段階に分かれており。HSV-2 が神経に潜伏感染している間に発現が認められるウィルス産物 LAT も現在のところ検出されていない。クラスターには、HSV-2 特異的 CD4 陽性 T 細胞受容体 Vb1 を発現するメモリー T 細胞が凝集していることを明らかにしているが、HSV-2 の糖タンパク質を認識する CD4 陽性メモリー T 細胞の局在が確認された。
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