現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウメマツアリは連鎖解析の結果から二つの性決定遺伝子座のうち、少なくとも一方の遺伝子座がヘテロ型であれば雌、二つの遺伝子座がホモ型の場合のみ雄になることが予想されていた。しかし、性決定初期遺伝子が未だ特定されていないため、表現型の雌雄と性決定遺伝子座におけるヘテロ・ホモ接合型の関連性が示されていなかった。そこで、現在までにHigh Resolution melting(HRM)解析によって二つの性決定遺伝子座の遺伝子型を識別するための遺伝子マーカーを作成した。これらの領域は、雌では少なくともどちらか一方がヘテロ型、雄ではどちらもホモ型になる。HRM解析の結果、近親交配によって生じた雌の接合型の内訳は、第一遺伝子座/第二遺伝子座の接合型の比率が、ヘテロ/ヘテロ : ホモ/ヘテロ : ヘテロ/ホモ = 1:1:1と有意差がなかった(X2 = 1.5036, df = 2, p = 0.4715, n = 137)。さらに、近親交配で生じた雄は全て二つの遺伝子座をホモ型に持つことも示された。したがって二つ性決定遺伝子座のうち少なくとも一方がヘテロ型なら雌、両方がホモ型なら雄になることが初めてHRM解析のレベルで初めて確認された。さらに、各アリルタイプを持つ個体ごとに性決定関連遺伝子の発現解析の結果から、二つの遺伝子座に由来する初期シグナルが、本種の性決定カスケードの中間に位置するfemに統合される可能性が強く示唆された。 また、これから行う予定であるRNAiやゲノム編集による機能解析のためマイクロインジェクション技術も向上し現在までに3齢幼虫以上の発生ステージではインジェクションが可能で生存率も高いことを明らかにした。今後はHRMによるアリルタイプの特定と機能解析を合わせることで、本種における性決定カスケードの詳細に迫っていく。
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