研究課題
本研究の目的は慢性痛のセルフ・マネジメントへの準備性について尺度開発,理論モデルの構築,介入研究を通じて,そのあり方を解明することである。平成29年度は,慢性痛のセルフ・マネジメントへの準備性を測定する質問票であるPain Stage of Change Questionnaire (以下PSOCQ)およびMultiple Pain Readiness to Change Questionnaire 2 (以下MPRCQ2)の日本語版の作成,および準備性の理論モデルの構築であった。平成29年度は3か月以上痛みを有する外来患者を対象にPSOCQを含む質問票を配布し201例からデータを取得した。解析により原版同様の前熟慮・熟慮・活動・維持の4因子構造を確認した。内的一貫性は良好な値を示したが,再検査信頼性についてはと中程度の値を示した。他の痛み関連尺度との相関については,前熟慮尺度は負の痛み関連アウトカムおよび不適応的対処行動と弱から中程度の正の相関を示した。活動尺度と維持尺度は自己効力感および適応的対処行動と弱から中程度の正の相関を示した。熟慮尺度は生活障害度および適応的・不適応的対処行動と弱い正の相関を示した。本研究は平成29年10月に第7回アジア痛みシンポジウムにて報告した。現在英文誌への投稿に向けて執筆中である。MPRCQ2日本語版の開発においても174例からデータを取得した。平成30年11月の第17回国際疼痛学会にて中間解析結果を報告予定である。平成30年後期に査読付英文誌への投稿を予定している。準備性の理論モデルの検討はMPRCQ2日本語版の開発で収集したデータの二次解析として実施する。痛みを説明変数,生活障害度を目的変数,自己効力感および痛みへの恐怖を媒介変数,準備性を各変数間の関係に寄与する調整変数とする仮説をたて,調整媒介分析を実施する。
3: やや遅れている
平成29年度は介入研究の開始を計画していたが,プログラム開発の進捗や受入研究機関における患者リクルートで遅れが生じたため,PSOCQおよびMPRCQ2のデータ収集と理論モデル構築のデータ収集を実施した。
平成30年度はPSOCQおよびMPRCQ2日本語版および理論モデルの構築の3つについて論文化を行う。平成30年度は米国University of Washingtonへ海外渡航するため,渡航先にて引き続き慢性痛に対する集学的介入のマニュアルの改訂作業を行う。
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