日本語の命令形式が、条件形式的に用いられる「であれ」「にせよ」の如く、命令とは異なる振る舞いをする現象について、歴史的観点からの研究を進め、個別的な形式の史的展開について、以下の研究成果の公開を行った。 ・「もういっぺん言ってみろ、怒るぞ」「この計画がばれてみろ、大変なことになるぞ」のような「てみろ」を中心とする、命令形の仮定条件形式化について。(『国語国文』87-5) ・平安時代に主に和歌において用いられた連語「さもあらばあれ」(「そのようにあるならばあってもよい」の意)が、一まとまりとなって逆接仮定条件的(「どのようにあったとしても」の意)として用いられるようになる過程について(『日本語学論集』15)。 ・文末で用いられる命令形式(~しろ。)が文の内部に移動する(~にしろ、~)ことへの関心に基づき、意志・推量形式が同様の変化を起こす「ようと」「まいと」「ようが」「まいが」の一群の歴史的展開について。(『日本語文法』19-1) こうした命令形式の特殊な振る舞いや類似形式の変化について、「命令形式の条件形式化」という観点(NINJAL-Oxford 通時コーパス国際シンポジウム、『国語と国文学』96-7)と、「意味変化と統語変化の連動」という観点(第3回 日本語と近隣言語における文法化に関するワークショップ)から総括し、これまでの研究成果を博士論文「日本語命令形式の通時的研究」として取りまとめ、2018年11月に提出した。併せて、中世~近世の資料(平家物語・狂言台本)の対照による、命令表現側の変化について(東京大学国語国文学会 平成30年度大会)、また、対照に用いる資料の電子化に関して(「通時コーパスの構築と日本語史研究の新展開」研究発表会)口頭発表を行い、その他、東京大学所蔵の室町時代語資料の翻刻も行った(『日本語学論集』15)。
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