研究課題
本研究では、動物の記憶のメカニズムの解明を目指し、その解析モデルとして線虫C.elegansの温度適応の実験系をもちいることができるかを解析した。温度適応とは、25℃飼育個体は2℃で死滅するが、15℃飼育個体は2℃でも生存できる現象である。さらに、25℃飼育個体を、3時間15℃に置くと2℃で生存できることが見つかっている。つまり、温度記憶が3時間で置き換わると考えられる。しかし、この温度記憶がどのような組織で制御されているかは未知であった。本研究では、ホ乳類から線虫まで記憶に関わることが知られている転写因子CREBに着目した。温度適応テストの結果、野生型が3時間で新しい温度に適応するのに対して、CREB 変異体(crh-1)は5時間かかった。つまり、crh-1変異体は野生株に比べ新しい温度への適応に時間がかかることが明らかになった。昨年度までに新しい温度への適応に関わるCREBの機能細胞の同定に向け、crh-1変異体の神経系の細胞特異的に、様々なプロモーターの下流でCREBcDNAを発現させたところ、CREBの機能細胞として頭部のわずか一対の介在ニューロンを同定した。この同定した介在ニューロンは、温度受容ニューロンと直接は接続していなかったため、当該年度において、上流のニューロンを構成的に活性化させることで、温度受容ニューロンから介在ニューロンに至るまでの神経回路の候補を見つけた。温度記憶に関わる遺伝子のスクリーニングの前年度に引き続き行った。温度変化に応じて顕著に発現変動している遺伝子に関して、その温度馴化を測定し、細胞特異的な回復実験から温度馴化に関わる新しいニューロンとして化学受容ニューロンADLが見つかった。カルシウムイメージング解析から、ADLは温度受容ニューロンとして機能することが見つかり、ADLを介した神経回路が温度馴化に関わることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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