研究実績の概要 |
本年度は、まず画像認識技術を用いた動物トラッキング技術の開発を行った。既存のソフトウェアでは、時系列情報を利用してトラッキングを行うため、一度誤ってトラッキングすると正しいトラッキングに復帰出来ず手作業で修正する必要があった。そのため、QTL解析のように数百もの動画を解析する場合にトラッキングを用いる事は難しかった。本研究では、各フレームごとに独立で動物の画像認識を行うことで人手を介さずにトラッキングする手法を開発した。既存手法と比べ、QTL解析に必要な量的形質という点では人手を介していないにもかかわらず同等の精度を得られる事を確認した。
また線虫C.elegansの行動データを対象として、既存研究よりバイアスの少ない解析手法を提案した。Brown et al.(PNAS 2013)は、行動時系列データから頻出する行動パターンを検出することで遺伝子変異体のクラスタリング解析を行った。しかしながらこの手法では、線虫変異体ごとの取りうる姿勢パターンの違いといったバイアスを考慮していないという問題点があった。これらのバイアスを取り除いてデータの再解析を行った結果、意思決定の違いのような真に行動学的に興味深い変異体は検出されなかった。本研究成果については、英語論文が既に出版されている。(Fukunaga and Iwasaki, BMC Bioinformatics, 18, 46 (2017))
加えて、行動を制御する分子機構の一つとして注目を集めているlncRNAの機能を推定する手法として、lncRNAとmRNAの相互作用を高速かつ網羅的に予測するソフトウェアであるRIblastの開発を行った。本研究成果については、英語論文が既に受理されている。(Fukunaga and Hamada, Bioinformatics, in press (2017))
|