本年度は、昨年度開発した画像認識技術を用いた動物トラッキング技術を利用して、実際に複数の系統のメダカのトラッキングデータ解析を行った。トラッキングソフトウェアの性能そのものは下流のデータ解析に十分使用できるほど優れていたものの、得られたトラッキングデータをどのようにQTL解析に利用できる形の量として表現するかという点に苦心している。これは、速度や進行角度の比較といった類似性を比較することは容易であるが、人間が見たらわかる行動パターンの違いを単一の量として表現することが困難なためである。現在のところ、地理学の分野などで利用されている空間統計学の手法を適用出来るかどうか、また機械学習手法における分類指標を用いることが出来るかについて検討を進めている最中である。
また、昨年度開発を行ったlncRNAとmRNAの相互作用を高速かつ網羅的に予測するソフトウェアであるRIblastについては、その後も研究を進め、ヒト・マウスのlncRNA-mRNAの網羅的な相互作用予測データベースであるLncRRIdb(under submission)や、検出されたRNA-RNA相互作用の統計的有意性の検出手法(in revision)について開発を行った。今後は、ヒト・マウス間で保存されているlncRNA-mRNA相互作用の網羅的検出や、pre-mRNAとlncRNAの相互作用予測を可能にする更に高速なアルゴリズムの開発を進めることで、行動の基盤となる分子機構の一つであるlncRNAの機能を明らかにしていきたいと考えている。
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