研究課題
今年度はElovl6欠損マウスおよび中枢神経特異的Elovl6欠損マウスの脳の組織学、細胞生物学、分子生物学的解析および行動解析をおこなった。in situ hybridizationにより、Elovl6は脳の広範に発現していることが明らかとなった。また、Elovl6欠損マウス、中枢神経特異的Elovl6欠損マウスはともに脳重量が増加するが、Elovl6の欠損により、海馬歯状回、脳室下帯において神経新生は低下した。大脳皮質を用いた神経幹細胞培養の結果においても細胞増殖や分化に異常を示唆する結果が得られた。さらに、Elovl6欠損は樹状突起スパインの数が減少し、異常な形態を示すスパインの割合が多く認められた。行動解析では、Elovl6欠損マウスにおいて多岐にわたる障害が認められたが、中枢神経特異的Elovl6欠損マウスでは特定の行動において異常が認められた。したがって、脳以外の組織との連関や、末梢神経などの重要性も示唆される。海馬神経初代培養においてはElovl6の欠損により、神経単独によるスパインの低下、アストロサイト単独培養による機能変化が認められ、共培養の結果より、アストロサイトにおけるElovl6の欠損が樹状突起や軸索の伸長に影響をおよぼすことが明らかとなった。以上のことより、脳におけるElovl6は脳の正常な発達に重要であり、神経、グリア細胞のような脳構成細胞や、さらにそれらの相互作用にも影響をおよぼすことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね期待し通りの結果が得られており、Elovl6が脳の発達や機能に重要であることを明らかにした。論文化にむけて順調に進展している。
Elovl6の欠損により認められる脳の表現型についてはおおむね明らかとなった。今後はこれまでの表現型を回復するような脂質因子の探索や、オミクス解析により、Elovl6により制御されるシグナルや脂質メディエーターなどを明らかとし、脳の発達、機能におよぼす影響を分子レベルで解明する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Journal of Diabetes Investigation
巻: - ページ: -
10.1111/jdi.12621
PLoS One
巻: 11(6) ページ: -
10.1371/journal.pone.0157580
Scientific Report
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http://www.u-tsukuba-endocrinology.jp/study/result/paper.html