今年度は不揮発性メモリの活用方法について取り組んだ。具体的には、ユーザーアプリケーションレベルのページキャッシュ機構の設計を行った。 本課題では、メインメモリの容量を拡張するために不揮発性メモリをDRAMの延長として活用することで、スーパーコンピュータなどの大規模システムの消費電力やコストを抑えることを狙っている。 これまで不揮発性メモリ上にあるデータをメインメモリ(DRAM)上で操作するために既存のカーネルに実装されているメモリマップドファイル機構を使用してきた。この手法はストレージ上にあるファイルデータを操作する方法として広く一般的に使用されているが、グラフ処理などの大量のランダムなメモリアクセスが発生するイレギュラーアプリケーションでは既存のページキャッシュ機構を使用した場合、I/O性能に対して大幅なオーバヘッドが課される問題がある。 そこで、この課題に対して、ユーザーアプリケーションレベルでのページキャッシュ機構の設計に取り組んだ。具体的には、ユーザーレベルにて確保したメモリスペース内でページキャッシュの管理とストレージデバイスとのI/O処理を行うことで、アプリケーションのメモリアクセスパターンに根付いたページの入れ替え処理を可能にし、ページの入れ替え処理にかかるオーバーヘッドを最小限に留めることを狙っている。今年度は年度内での辞退のため、現状ではこのライブラリの設計は初期段階であるが、今後もこの課題の研究を行うことで、大規模グラフ処理以外にも様々な大規模イレギュラーアプリケーションへの適応が可能なライブラリとなることが期待される。
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