研究課題
本研究課題は、スーパーフレア星など、磁気活動の活発な天体の詳細な観測研究を通して、太陽・恒星のダイナモ理論(磁場の形成・進化の問題) の解明へ挑むことを目指している。2017年度は特に以下の4点について、研究実績が得られている。(1) ケプラー宇宙望遠鏡の高時間分解能モード(時間分解能1分)のデータから発見されたスーパーフレア星について、Apache Point天文台3.5m望遠鏡を用いた高分散分光観測を昨年度から実施中である(ワシントン大学のSuzanne Hawley氏らとの共同研究)。巨大黒点や自転速度の情報について、Keplerの光度曲線の結果と矛盾ない結果が得られている(現在、論文準備中)。(2) Keplerの後継機TESS衛星(2018年4月18日打上成功) で観測される近傍のスーパーフレア星候補について、将来の詳細なモニタ分光観測に最適な天体の選択に資することも目的として、上述のApache Point 3.5m 望遠鏡を用いた高分散分光観測プロジェクトを開始した。本年度中に既に10晩の観測を実施している(2018年度も1ヶ月に1回程度の頻度で継続的に観測実施予定)。TESS の測光データや今後の複数回の分光観測と合わせて長期的な変化も探る計画である。(3)これまでのKepler衛星データでのスーパーフレア研究の継続として、太陽型星の巨大黒点の発生頻度やサイズ分布と、 スーパーフレア発生との関係について、統計的な研究を行った(共著論文1編)。また、黒点の寿命について、ケプラー衛星データでの解析を、グループとして論文準備中である。さらに、継続時間とエネルギーの観点から太陽の白色光フレアと恒星スーパーフレアの統計的な比較研究も実施(共著論文1編)。(4)(2)に関連して実施した西はりま天文台なゆた望遠鏡でのM型星フレア分光観測について、共著論文が出版された。
2: おおむね順調に進展している
まず、ケプラー宇宙望遠鏡データの解析について、順調に論文が出版されている。ダイナモ理論に挑むための重要な要素である「巨大黒点の寿命」や「差動回転」といった点についても、研究チームとして新たな解析手法も用いた結果が出ており、論文準備中である。昨年度から開始した、Apache Point天文台での、スーパーフレア星高分散分光観測プロジェクト(ワシントン大学のSuzanne Hawley氏との共同研究で実施)については、当初予想以上に順調に進み、これまでに計16晩の観測を行なっている(主に、日本からのリモート観測)。データ解析も問題なく進み、結果も概ねまとまり、現在論文準備中である。将来に向けた議論については、間も無く本格稼働が予定されている京大3.8m望遠鏡や、2018年4月に打上げられたTESS衛星を用いたスーパーフレア研究計画についても、具体的に検討を行ってきた (複数の研究会での発表も実施)。 TESS衛星のサイエンスについては、ワシントン大学のJames Davenport氏やNASAゴダード宇宙飛行センターのVladimir Airapetian氏を始めとする米国の研究者と共同でGuest Investigator Proposalを2件提案し無事採択された。その一貫でTESSで観測されるスーパーフレア候補星の、Apache Point天文台を用いた新たな分光観測プロジェクトも開始し、2017年度中だけで10晩の観測を実施している。このプロジェクトの概要と初期結果について、4月にNASAゴダードで開催された国際会議等でも報告を行い、関係者と適宜議論を行っている。また、西はりま天文台なゆた望遠鏡でのM型星フレア分光観測について、共著論文が出版されたが、これは将来の3.8m望遠鏡でのより多数の天体のフレア時の分光観測のテストケースとして、重要である。
まず、グループとして、ケプラー宇宙望遠鏡のデータ解析に引き続き取り組み、黒点の寿命や差動回転の結果について、2018年度中に論文を発表する。また、太陽型星だけではなく、より低温の星(K,M型星)でのフレアについても、発生頻度や黒点サイズとの比較について、すでに結果を得ているので、論文化を急ぎたい。後者は、系外惑星のハビタビリティの観点から重要性を増しつつあるので、その観点からも議論を急ぎたい。分光観測については、Apache Point 3.5m望遠鏡での観測プロジェクトを継続し、 ケプラー天体の結果については、博士論文のメインにもなるので、執筆中の論文の投稿を急ぎたい。 TESSで観測される明るい太陽型スーパーフレア星候補の高分散分光観測プロジェクトも、Apache Point 3.5m望遠鏡での観測を1ヶ月に1回程度の頻度で継続して行って行く予定である。TESS衛星(2018年4月18日打上成功)のデータが年度終盤には公開される予定なので、順次分光データの取りまとめを進め、準備を進めて行く計画である。また、2018年度後半以降には、国内でも京大3.8m望遠鏡の観測が出来るようになるので、それに向けた、フレアの分光観測計画の具体化、巨大黒点モニタ分光観測の観測星選定、分光データ解析手法のより一層の効率化も進めていきたい。
論文発表・研究会発表の情報を適宜載せている。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 9件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
巻: 69 ページ: 41(13pp.)
10.1093/pasj/psx013
The Astrophysical Journal
巻: 851 ページ: 91(14pp.)
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日本惑星科学会誌
巻: 26 ページ: 159-168
自然と科学の情報誌 milsil (国立科学博物館発行)
巻: 2017年4巻 ページ: 18-19
http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/~ynotsu/