本年度は、環境分野の政策形成において、「エビデンスに基づいた政策形成」(EBPM)の考え方を導入するために、エビデンス評価に不可欠な「視点」と、エビデンス評価・活用が行われる科学と政治の相互作用の「段階」の二つの観点から、政策過程でエビデンスが運用される中で生じる課題を発見するためのフレームワークを整備した。環境分野におけるEBPMに関する研究は、世界的にもまだ検討が進んでいないテーマである。公共政策の他の領域で普及しているEBPMは、エビデンスと政策形成について、しばしば非常に狭い定義が採用される傾向があった。本研究では、政策効果の推定に関わる効果検証型エビデンスと、政策課題の前提や課題の認知に関わる立法事実型エビデンスを区別することで、エビデンスの科学的身分についてより詳細に論じた。さらに、課題設定、立案、決定、実施、評価の各段階でエビデンスの運用が適切に行われるかをチャックするために、エビデンスと政策課題の関連性に関する指標、エビデンスの生産と活用の社会的適切性に関する指標、エビデンスの取得と活用の正統性に関する指標を整備して、より網羅的にEBPMを捉える視点を整備した。これと合わせ、科学的探求と政策的対応の制度化の相互作用の段階を区別することで、この相互作用の段階がEBPMの実践を規定しており、それに伴い、検討すべき課題が異なることを整理した。当該研究は、国立環境研究所のリスク研究者に助言を仰ぎながら進め、研究の概要に関する口頭発表を行った。2019年度中に論文投稿を行う予定である。
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