研究課題/領域番号 |
16J00369
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯田 隆人 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | クローキング / メタマテリアル / 微小水路網 / 浅水波 / 自由表面波 / 座標変換 |
研究実績の概要 |
著者は海洋波におけるメタマテリアル及びクローキングの理論体系を構築し、海洋に波のない空間を生成することを目指した。クローキングとは透明マントと訳される現象であり、波の伝搬方向を制御することで、あたかもそこに物体がそこに存在しないかのようにみせる手法である。クローキングを実現するためには従来ではありえない波の挙動を起こすことが必要であり、そのような“ありえない”性質を誘発するを物質をメタマテリアルといい、特殊な波の挙動を起こすことのできる海洋波メタマテリアルを開発することでクローキングを実現し、海洋に波の無い空間を創る。 本年度は、水波の中でもとりわけごく浅い水域を伝搬する浅水波、および十分水深が深い水域を伝播する深水波において、クローキングが理論的に実現できることを示した。クローキングを実現するためには、波が伝わる媒質の性質を異方性にする必要があることを示し、流体に異方性を仮定した数値計算により、クローキングが再現できることを明らかにした。 また上記は流体に特殊な状態を仮定したうえでの数値計算であるが、それを実現するメタマテリアルとして、著者は浅水波において微小水路網を提案した。波の長さよりも十分小さい水路を用い、その水路の幅、高さ、長さを変えることで、異方性の流体と等価な波動場を創りだせることを理論的に明らかにした。クローキングのための微小水路網の設計を行い、その状態の波動場を数値計算により求めた。数値計算では、物体を完璧にクロークすることができず、影が生じてしまっているものの、波の反射を抑えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画実施計画では、流体の制御すべきパラメータを明らかにし、仮想的な流体により数値計算を行うまでが本年度の課題であった。しかし、それに加えて、微小水路網により実際に波動場を設計する理論を構築でき、当初の期待以上に研究が進展しているといえる。一方で、本来は深水波を対象に研究を行っていく予定であったが、微小水路網の理論を構築する際に、簡単のため浅水波にて研究を行ったため、研究の完遂のためには、理論を深水波へと拡張することが求められる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点における課題は以下の二つである。 ①著者が構築した微小水路網の理論において、数値計算を行った際にインピーダンスは理論通り計算されているものの、位相速度に関してはズレが生じてしまっている。それが物体に影ができる原因であると考えられる。そのため、理論を見直し、位相速度の影響を検証する。 ②微小水路網は現時点では浅水波にたいする理論である。実際に海洋で用いるためには、深水波における理論を構築しなければならない。深水波は分散関係があり、周波数に対する依存性があるため浅水波より複雑になると考えられる。それらを考慮に入れ、深水波の理論として構築することが求められる。
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