研究課題/領域番号 |
16J00385
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 由隆 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 朱子学 / 知行論 / 格物致知 / 敬義内外 / 懐徳堂学派 / 五井蘭洲 / 中井竹山 / 中井履軒 |
研究実績の概要 |
本年度における最大の成果は、まず前年度に日本中国学会第68回大会(於奈良女子大学、2016年10月8日)において発表した内容をもとに完成させた、拙稿「懐徳堂学派の知行論」が『日本中国学会報』第69集に掲載されたことである。これにより、本研究の核となる仮説を提唱することに成功した。 本稿の意義は、中国哲学、とりわけ日本思想史研究において、ともすれば「先知後行」と「知行合一」の二項対立で理解されることの多かった知行論について、「知行並進」という第三の理念の重要性を、懐徳堂学派の観点から提起した点にある。これは今後、学問観の継承と展開という問題を考察していく中で、日本儒学史、中国哲学史における「知行並進」論の意義を再評価するための原動力となることが期待される。 また本年度の初頭、「五井蘭洲を中心とした懐徳堂学者の知行論について」という課題の一環として、研究対象である五井蘭洲および門人の中井竹山の「敬」論についての考察を計画し、一定の成果を得た。これについてまず「第27回懐徳堂研究会」において発表した後、「五井蘭洲の「敬」論についての一考察」と題した論文を『懐徳堂研究』第9号に投稿した。現時点の見通しとして、彼らの「敬」と「義」の解釈と、「敬義内外説」として知られる闇斎学派の「敬」と「義」の解釈との間に存在する共通点と相違点をさらに考察することにより、懐徳堂学派の実践観の特色を明らかにすることができると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度初頭の段階では、上述の研究に加え、「知行論より見た近世儒学史の思想的展開についての考察」という課題の一環として、明代を中心とした知行論の思想的展開についての考察を計画していた。これについては現時点で成果を出すことが叶わなかったため、進捗状況としてはやや遅れていると言わざるをえない。 ただし、報告者は2018年2月より、貴会の「平成29年度若手研究者海外挑戦プログラム」に採択され、明代思想史の研究者である北京大学哲学系の張学智教授の指導の下、上記課題に着手している。これにより、次年度の前期のうちに当該課題についても一定の成果を出すことができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度具体的に計画している課題としては以下の2点である。 まずは「知行並進論の系譜と日本儒学への影響性について」。近世儒学史における知行並進論の継承と展開について考察を行う。前述のごとく明代における知行論の実態を整理した上で、こうした明儒の知行論が日本儒学に与えた影響について考察する。 次に、「懐徳堂学派の文章観とそれに伴う実践について」。彼ら懐徳堂学派の文章観は、実践のための学問を重視する知行並進論と非常に関連した思想であるように思われる。そこで各学者の書籍等を用い、彼らの文章観とそれに基づく実践の実態について考察することを試みる。 また今年度は当該研究課題の最終年にあたるため、上記の2点についての考察を行いつつ、これまでの研究内容を整理し、懐徳堂初・中期の学者の知行論をめぐる思想についての研究に一つの区切りをつけることを目指す。
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