本年度、報告者はこの3年間の研究成果を、博士論文『懐徳堂学派の学問観』としてまとめあげ、2018年12月に提出し、2019年3月に受理された。本論文は懐徳堂学派の「実践」観を見るために、彼らの主張する「知行並進」「博約並進」という理念に焦点を当て、その思想史的意義について考察したものである。これにより、当該課題研究の最終年度として十分な成果をあげることができたと考えている。 本年度はまず、宋代から明代にかけての儒学における知行並進論の展開を整理し、その思想の日本への影響性について考察した。この成果を儒学:思想与典籍工作坊(於中国・北京大学)において発表し、「知行並進論の系譜」という論文を完成させ、博士論文の第2章として収録した。 また、他の懐徳堂学者と同じく「博約並進」を主張する中井竹山が、この理念の下で実用的な文章能力の取得の重要性を説いており、自身の教育実践にもそれを反映させていることが窺える、ということを考察した、論文「中井竹山の文章論」も完成させ、博士論文の第4章として収録した。 この一方で、博士論文として集約するにあたり、以前に発表した内容を再修正することも行った。まず、「懐徳堂学派の知行論」(『日本中国学会報』第69集、2017年10月)の内容を修正したものを第二届国際青年儒学論壇(於中国・山東省鄒城市擇隣山荘)において発表したのち、これを第1章として収録した。 また「五井蘭洲と中井履軒の格物致知論」(『東アジア文化交渉研究』第10号、2017年3月)についても修正を加え、第3章として収録した。こちらの論文については、竹田健二編『懐徳堂研究 第二集』(汲古書院、2018年11月)にも収録された。
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