研究課題/領域番号 |
16J00401
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
竹内 康人 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ミオシン / 細胞競合 / 細胞間コミュニケーション / カルシウム |
研究実績の概要 |
発がんの超初期段階では、上皮細胞層にがん原性遺伝子変異が生じ、正常細胞と変異細胞が共存する上皮細胞層となる。この時、正常細胞と変異細胞の境界で細胞非自律的な変化が生じ、正常細胞に囲まれた変異細胞は、上皮細胞層から排除(apical extrusion)される。しかし、排除対象となる変異細胞を周囲の正常細胞はどのように認識しているのか、その認識メカニズムは明らかになっていない。本研究では、新たな細胞間認識メカニズムの探索を目指し、ミオシンⅡ調節軽鎖(myosin Ⅱ regulatory light chain: MLC)とその上流制御因子であるカルシウム(Ca2+)に着目した。 昨年度の結果から、定常状態において、ミオシンⅡ阻害剤であるBlebbistatinを添加すると、周期的な増減を示すMyosin Light Chainの集積変化(Myosin oscillation)が消失しただけでなく、spontaneousに観察されたCa2+ sparkも消失した。このことから、Myosin の上流因子であるカルシウムに着目して研究を進めた。イヌ腎上皮細胞株であるMDCK細胞に、カルシウムインジケーターを恒常発現させたMDCK-GCaMP6S細胞を用いて、定常状態におけるカルシウムの変化をタイムラプスで観察したところ、死細胞の周りの正常細胞で、非常にダイナミックなカルシウムの伝搬(カルシウムウェーブ)が観察された。そこで、細胞死を誘導するCaspase-8をモザイク状に正常細胞層に発現させたところ、始めにCaspase-8陽性細胞内でカルシウム濃度が増加し、連続して、同心円状に周囲の複数の正常細胞に渡って、カルシウム濃度の増加の伝搬が見られた。今後は、この変異細胞周囲の正常細胞で観察されたカルシウムウェーブのメカニズムの解明、並びに変異細胞排除との関係を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Caspase-8陽性細胞周囲の正常細胞で観察されたカルシウムウェーブを詳細に解析したところ、十分なCaspase-8発現が見られる直前でカルシウムウェーブが生じることが分かった。また、カルシウムウェーブが生じたCaspase-8陽性細胞では、ウェーブが見られなかったCaspase-8陽性細胞よりも、Caspase-8発現開始から排除されるまでの時間が有意に短くなっていた。このことから、カルシウムウェーブは、Caspase-8陽性細胞の排除現象に関与していることが示唆された。現在は、カルシウムウェーブの発生メカニズム並びに、その生物学的な意義を明らかにすべく研究を進めており、これまでのところ研究は順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内カルシウム濃度の調節は、主に3つのチャネルによって制御されていることが知られている。細胞膜カルシウムチャネル・小胞体膜受容体チャネル・ギャップ結合の3つである。これらの阻害剤を用いた実験、並びにそのノックダウン細胞を樹立し、その発生メカニズムを明らかにする予定である。また、カルシウムウェーブの下流因子の探索であるが、これまでの我々のデータから、カルシウムウェーブが生じた直後に、Caspase-8陽性細胞が、頂端側(apical)すなわち、排除される側に移動することが観察されていることから、アクチンやミオシンといった細胞骨格に必須のタンパク質への影響があるのではないかと考えている。既に、アクチンを同時に観察するために、MDCK-GCaMP-Lifeact細胞株や、ミオシンを同時に観察するために、MDCK-GCaMP-MLC(Myosin-Light-CHain)といった細胞株を樹立しており、カルシウムウェーブが惹起する細胞骨格系の変化をイメージングにより調べる予定である。
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