研究課題/領域番号 |
16J00424
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石川 一也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 移行タンパク質 / 原形質連絡 / 細管状構造 |
研究実績の概要 |
本研究の1年目の計画では原形質連絡上に細管状構造を形成するウイルス移行タンパク質を蛍光タンパク質と融合させクローニングし、誘導プロモーター制御下で発現可能な形質転換シロイヌナズナとBY-2培養細胞を作出作成する予定であった。これらの形質転換体を用いて i) ウイルス移行タンパク質形質転換シロイヌナズナを用いた細管状構造形成変異体の単離、ii) 形質転換BY-2を用いた細管状構造の形成時の細胞骨格の変化の観察、を行う計画であった。しかし4種類のウイルスの移行タンパク質について一過的発現系でその局在を観察したところ、いずれも原形質連絡もしくは細胞膜に局在したものの、原形質連絡から細管状の構造を形成するものが存在しなかった。 i) ウイルス移行タンパク質形質転換シロイヌナズナを用いた細管状構造形成変異体の単離 細管状の構造を形成する蛍光タンパク質融合移行タンパク質を得るのに時間がかかると判断されたため、4種ウイルスのうち原形質連絡への局在が確認された移行タンパク質をシロイヌナズナに形質転換し、誘導プロモーター制御下で発現する個体を作出した。この形質転換個体は発現を誘導すると一過的発現時と同様に原形質連絡に特異的に局在したことから、この個体から得られた種子を変異原処理し、原形質連絡へ局在することができなくなる個体を選抜することとした。現在は変異現処理した種子の当代(M1)の個体を育成している段階であり、次代 (M2)で局在に変化がないかスクリーニングを実際に行う予定である。 ii) 形質転換BY-2を用いた細管状構造の形成時の細胞骨格の変化の観察 細胞骨格をラベルするBY-2形質転換体を得たものの、細管状構造を形成する蛍光タンパク質融合移行タンパク質が確立できていない。このため下記に示す方法によって対策を行い現在実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛍光タンパク質を融合したウイルス移行タンパク質を発現させ局在を確認したが、原形質連絡には局在したものの、既報とは異なり細管状構造の形成を確認することができなかった。1つ目の実験計画である、「ウイルス移行タンパク質形質転換シロイヌナズナを用いた細管状構造形成変異体の単離」については、原形質連絡に局在する移行タンパク質を用い変異体をスクリーニングすることとした。こちらの計画はウイルス移行タンパク質を誘導プロモーター下で発現する形質転換シロイヌナズナの確立に成功し、変異原処理は当初の計画通りに遂行できている。しかし、2つ目の実験計画である「BY-2細胞における細管状構造の形成時の細胞骨格の変化の解析」については計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス移行タンパク質が細管状構造を形成しなかった原因として、融合させた蛍光タンパク質が関係しているのではないかと考えている。対策として、現在は蛍光タンパク質を融合させない移行タンパク質をクローニングしている。BY-2細胞の輪郭が細胞骨格マーカーで区別できるため、蛍光タンパク質を付加せずに細管状構造を形成したBY-2細胞を判別することができると考えられる。BY-2に形質転換をして試すと時間がかかると考えられるため、パーティクルボンバードメントの一過的発現系で、細管状構造が確認されるか試す予定である。一方、ウイルス移行タンパク質形質転換シロイヌナズナを用いた細管状構造形成変異体の単離については、原形質連絡への局在が確認された移行タンパク質をシロイヌナズナに形質転換し、誘導プロモーター制御下で発現する個体を作出した。細管状構造を形成する移行タンパク質を形質転換する当初の計画とは異なるが、細管状構造の形成は移行タンパク質の原形質連絡への局在と密接に関わっていることが予想されるため、現行の方法で遺伝子を同定した後に細管状構造の形成に関わっているか検証が可能である。
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