前年度までの実験で、孔辺細胞において移行タンパク質が原形質連絡(PD)に局在せず、細胞質に凝集する変異体(91-10)が単離された。本年度はこの91-10の変異原因遺伝子のマッピングを行なった。まず、91-10(Colombia-0バックグラウンド)をエコタイプLerdsbergと交配を行いF2個体群の中から表現系を示す74個体を集め遺伝子マーカーによるマッピングを行なった。その結果シロイヌナズナ第一染色体の18.40 Mbpから19.45 Mbに原因遺伝子が存在していることが示された。91-10変異体のこの領域を次世代シーケンスによって配列解析すると、データベース上のColumbia-0ゲノム配列と比較して、タンパク質コード領域の非同義置換変異が4箇所存在することがわかった。さらに、遺伝子の発現量 とエチルメタンスルホン酸で誘導される変異の傾向を考慮すると4箇所の変異のうち2箇所の変異のいずれかが原因である可能性が高いと考えられた。 さらにウイルス移行タンパク質のPD局在に関わる可能性の高いタンパク質としてsynaptotagmin 1 (SYT1)が知られているため、SYT1の解析を合わせて行った。SYT1は動物や酵母で小胞体-細胞膜接着部位に存在することが知られているが、植物細胞においてはその細胞内分布は詳細に調べられていない。そこで共焦点顕微鏡と全反射蛍光顕微鏡を用いてSYT1の細胞内局在を観察したところ、SYT1は小胞体上の管状の領域に局在した。さらに動画を観察すると、SYT1が局在している領域は静止しており、SYT1が局在していない小胞体の領域は活発に細胞内を動いていることがわかった。この小胞体上の動かない領域が小胞体-細胞膜接着部位であると考えられた。
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