本研究では、骨格筋幹細胞特異的プロテアソーム機能不全マウスを用い、骨格筋幹細胞におけるプロテアソームの役割について明らかにすることを目的とする。筋幹細胞特異的にプロテアソーム機能不全を起こすために、筋幹細胞特異的なPax7プロモーター下流にCre組換え酵素を挿入したPax7-CreERT2マウスに、Rpt3f/fマウスを掛け合わせて筋幹細胞特異的プロテアソーム不全マウス(KOマウス)を作出した。KOマウスからFACS(Fluorescence Activated Cell Sorting)を用いて、幹細胞を単離し、qPCRにより目的遺伝子が有意に発現低下していたことから、系がうまくいっていることを確認した。また、これらの細胞を用いてプロテアソーム活性を評価したところ、KOマウス由来の筋幹細胞において有意に活性低下していた。ノックアウトの影響を確認するために、ノックアウト後に体重および筋重量を解析したところ、コントロールとKOマウスでは差は認められなかった。さらに骨格筋機能を調べるために、持久力テストを行ったところ、運動持続時間においても差は認められなかった。そこでintactな骨格筋において、筋幹細胞数を定量したところ、KOマウスでは幹細胞プールの減少が起きており、それらは細胞死によるものであることがわかった。また、細胞増殖能を解析したところ、KOマウス由来の筋幹細胞ではコントロールに比べて、増殖能が低下していることがわかった。これらの細胞をアレイにかけて、網羅的に調べたところ、いくつかのシグナル系が亢進していることを突き止めた。それらについて遺伝子・タンパクレベルで個々に確認し裏づけをとることができた。次年度はこのシグナル系が、KOマウスでの重要なシグナル系であることを更なる多角的な解析で明らかにしたい。
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