研究実績の概要 |
ピロール置換サブポルフィリンのひとつであるイミダゾロサブポルフィリンの環外周部のイミン窒素を配向基に用いることで、メゾ-フェニル基のオルト位とイリジウムが結合を形成したイリジウム錯体1が得られた。このイリジウム錯体1とジフェニルアセチレンとの反応は、添加した塩によって異なる生成物を与えることがわかった。テトラアリールホウ酸ナトリウムを加えたときは、ジフェニルアセチレンの片方のフェニル基の転位が起こり、1-イリダインデンを有するイリジウム錯体2が得られた。一方、ヘキサフルオロリン酸カリウムを加えたときには位置異性体の関係にある2種類のイリジウム(III)-カルベン錯体3および4が得られた。これらの錯体は、ポルフィリノイドの骨格上にカルベンを発生させた初めての例である。また、得られた一連のイミダゾロサブポルフィリン-イリジウム(III)錯体は特徴的な紫外可視および近赤外吸収スペクトルを示した。 また、サブクロロフィンのα位修飾反応を足がかりとしてサブクロロフィンジチオラートを合成し、種々の反応条件に付すことで含硫黄複素環骨格に有するピロール置換サブポルフィリンであるジチアゾロサブポルフィリン、ジチアジノサブクロリン、オキソジチアジノサブクロリンの合成を達成した。これら新規ピロール置換サブポルフィリンのうち、ジチアゾロサブポルフィリンは最も摂動を受けた物性を有しており、例えば、サブクロロフィンと比べて著しく減少した環電流や、大きく長波長シフトし700nmを超える紫外可視吸収スペクトルを示した。これらの大きな摂動は、ジチアゾロサブポルフィリンの1つの硫黄原子上を酸化したS,S-ジオキソジチアゾロサブポルフィリンでは観測されなかった。
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