研究課題/領域番号 |
16J00464
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
朝岡 寛史 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 空間的視点取得 / 直示動詞の理解 |
研究実績の概要 |
直示動詞と空間的視点取得の視点に関する構造の類似性に着目し、直示動詞の理解を促す指導方法を明らかにすることを目的とした。具体的には、①ASD児における空間的視点取得の特性を評価した上で、②その指導法を検討した。それらの知見をふまえて、③直示動詞の指導法への適用を試みた。 ①について、空間的視点取得課題において、視点の非明示/明示性が課題のパフォーマンスに与える影響を検討した。ASDの診断を受けた6~8歳代の幼児・児童16名とTD児53名の計69名のデータを収集した。視点に関する非明示的教示条件では、地図上の交差点において「右/左に曲がります」と教示し、参加児にミニカーを操作させた。視点に関する明示的教示条件では「運転手さんから見て右/左に曲がります」と教示した。その結果、ASD群はTD群と比べてミニカー操作の正反応率および視点移動行動の生起頻度が低かった。加えて、ASD群では発達的な変化が明確に認められなかった。 ②について、5名のASD児を対象に、見本刺激を注視し続けながら他視点位置まで移動する行動の形成、他視点位置でのみえの観察から比較刺激提示までの適切なタイムラグの長さの設定の効果を検討した。その結果、比較刺激の選択反応の正反応率の上昇および自発的な視点移動行動の生起頻度の増加をもたらされた。 ③について、1名のASD傾向がある幼児を対象に「わたす/もらう」が含まれた文理解において、視点に関する明示的教示および自己外在条件の導入の効果を予備的に検討した。指導では、刺激文を提示した直後に主語側の人物が「見て」と着目させ、直後に受け渡しの動作を開始した。さらに、主語側の人物とその動作に対する注視行動の生起および適切な動詞の選択に随伴して強化刺激を提示した。その結果、参加児は主体を同定して持続的に場面に着目し、その上で二者の関係性を記述し直すことを学習した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ASD児の空間的視点取得の特性および指導法について、自発的に自己の視点を他視点方向に移動する行動が出現する条件を検討することを計画した。加えて、その結果に基づき、ASD児における直示動詞の指導法の検討を計画した。どちらの内容についても、おおむね計画通りに研究を実施することができた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ASDにおける空間的視点取得の特性 (自発的に他視点に移動する傾向) については、ASD群の参加人数が不足しているため、追加的にデータを収集する。また指導法については、平成28年度の成果をふまえ、対面位置からのみえの推測を促進する条件を眼球運動の観点から検討する。直示動詞の指導法の適用については、参加児の人数を増やすとともに、他の動詞セット (例えば、売る/買う) への般化が成立するかどうかを検討する。
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