研究課題/領域番号 |
16J00473
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
飯田 良 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 自己集合化 / 金ナノ粒子 / 金ナノロッド / 温度応答性 |
研究実績の概要 |
本年度は金ナノロッドの表面に修飾した分子の水中での脱水和挙動に着目した温度応答性自己集合化について検討を行った。我々は過去に昇温に伴う脱水和挙動を示す非イオン性界面活性剤から着想を得た疎水基末端を持つオリゴエチレングリコール誘導体を合成し、球状金ナノ粒子の温度応答性自己集合化の誘起に成功している。ナノ粒子の表面分子の自由体積が小さくなるほど脱水和が起こる温度が低くなるため、球状金ナノ粒子の集合化温度は粒径が増大するほど低下することを見出している。この結果を受け、部位によって異なる曲率を持つ金ナノロッドでは、長軸側に修飾された自由体積の小さい分子から先に脱水和が起き、その後短軸側の分子の脱水和が起こると予想した。これにより、集合体の形状が温度によって変化すると期待し、実験を行った。 オリゴエチレングリコール誘導体で被覆されたした温度応答性金ナノロッドの集合化挙動を、主に吸収スペクトル測定によって評価した。吸収スペクトルの変化はプラズモンカップリングによって起こり、集合体の形状や粒子間距離によって得られるスペクトルは変化する。32x14 nmの金ナノロッドは温度を上げると始めは長軸側が強く相互作用することによって形成される“side-by-side assembly”を示す吸収スペクトルが得られたが、さらに加熱すると集合体の形状が特異な形状を持たない凝集体を示唆するものへと変化した。つまり、本研究で目的としていた段階的な集合体形状の変化が観察された。一方で54x15 nmの金ナノロッドでは加熱により“side-by-side assembly”を示す吸収スペクトルが得られたが、その後の加熱による吸収スペクトルの変化は見られなかった。このことから、段階的な集合体の形状の変化は金ナノロッドのアスペクト比に大きな影響を受けるということがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は昇温に伴う表面修飾分子の脱水和が誘起する金ナノロッドの自己集合化についての評価を行った。表面修飾分子として用いるアルキル基を有するオリゴエチレングリコール誘導体は良好な収率で得ることができた。金ナノロッドはさまざまなサイズのものを合成することができた。金ナノロッド表面に合成した表面修飾分子を金ナノロッドの修飾し、評価を行った。集合体構造が昇温に伴ってどのように変化するかが不明であったが、昇温過程で段階的に変化することを明らかにした。集合化の挙動は金ナノロッドのアスペクト比に影響を受けるという知見も得られた。現在は詳細なメカニズムや集合化のプロセスについての解析を行っている。当初予定していたとおりに研究が進展した。以上のような研究成果から、本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、水中で昇温に伴う金ナノロッドの温度応答性自己集合挙動についてより詳細な検討を進め"side-by-side assembly"の形成機構および更なる加熱による集合体の形状変化のメカニズムについて解析を進める。これに加えて、有機溶媒を用いて短軸側が集合化する"edge-to-edge assembly"と更なる加熱による集合体形状の変化を誘起することを狙い、実験を行う。集合化挙動の評価は吸収スペクトルや動的光散乱法、電子顕微鏡などを用いて行う。
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