研究課題/領域番号 |
16J00485
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大島 諒 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 二次元電子系 / 酸化物ヘテロ接合 / シリコン |
研究実績の概要 |
電子が有する、磁気に寄与する自由度である「スピン」を伝送するスピン輸送実験は媒体のスピン物性を解明する上で重要な役割を果たす。本年度は近年注目を集めている酸化物ヘテロ接合体界面に形成される二次元電子系を媒体としたスピン輸送実験の達成を、より確かなものとした。採用の前段階として既にLAO/STO界面を介したスピン輸送信号の観測を室温において達成しており、更なる確証を得るために複数の対照実験を行った。本研究ではスピン輸送を電子の拡散伝導に頼っているため、伝送距離を増加させたときの信号の減衰からスピンの減衰長を求めることができる。また、LAO/STO界面中ではスピン散逸が小さいことを広帯域の高周波を用いることで確認した。最後に理論モデルを組み立てLAO/STO界面でのスピン流の減衰長を見積もると、上記実験結果と一致する結果が得られた他、見積もられた値が従来スピン伝送媒体として良好な材料と同程度長いことを明らかにした。従来LAO/STO界面は極低温でのみ評価されており、スピン緩和が大きいと考えられてきたため、本研究成果は大きな反響を得ることができ、著名な学術論文雑誌であるNature Materials誌に掲載された。また、上記測定で用いた広帯域高周波測定をシリコンにも応用し、微細加工なくスピン注入効率を測定できる手法としてApplied Physics Letters誌に投稿中である。また、学会発表も国内・海外共に筆頭で行い、両研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度目の研究計画として、LAO/STO界面におけるスピン輸送の立証および実験的にスピンの緩和長を求めることを設定しているが、共に複数の対照実験を通して達成している。また、LAO/STO界面におけるスピン輸送の観測としてNature Materials誌に論文が既に掲載されている。また、副次的に対照実験をシリコンへのスピン注入の評価に応用するなども成功しており、新たに論文を投稿できたことから、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究でLAO/STO界面におけるスピン物性を解明する上で重要な物性値であるスピン拡散長を室温において見積もることに成功した。そこで、今後はLAO/STO界面におけるスピン物性(スピン流―電流変換現象など)を定量的に評価する。特に、他の研究グループは極低温(< 4 K)での研究のみ報告していることから、スピン物性の温度依存性を評価することに非常に興味があるため、その測定を行うためのデバイス構造・測定系を検討し評価していきたい。
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備考 |
(1)京都大学HP、(2)京都新聞HP、(3)Technical University of Munich HP
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