研究課題/領域番号 |
16J00514
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
楊 春 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 脳・神経疾患 / うつ病 / 抗うつ薬 / ケタミン |
研究実績の概要 |
現在、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体拮抗作用を有する麻酔薬ケタミンは、治療抵抗性うつ病患者に対する即効性の抗うつ作用を有するため、海外では注目されている。しかしながら、ケタミンの抗うつ作用の機序は、未だ不明である。我々は、ケタミンの光学異性体R-ケタミン(NMDA受容体への親和性が弱い)の方が、NMDA受容体への親和性が高いS-ケタミンより抗うつ作用が強いことを発表した(Yang et al. Transl. Psychiatry 2015)。今回、R-ケタミンの作用機序を解明するために、R-ケタミンあるいはS-ケタミン投与後の脳組織をプロテオミクス技術で解析し、発現の異なる幾つかのタンパク候補などを得た。現在、これらの候補タンパクがR-ケタミンの抗うつ作用に関わっているかを検討している。 さらに、うつ病の社会的敗北ストレスモデルを用いて、R-ケタミンあるいはS-ケタミン投与後の前頭皮質と海馬歯状回における発現の異なる遺伝子を網羅的に解析するRNA-seq解析を実施し、現在解析中である。 さらに、ケタミンの抗うつ作用機序に関して、昨年、ケタミンの抗うつ作用は、ケタミン自身でなく、R-ケタミンの最終代謝物(2R,6R)-hydroxynorketamine (HNK)が寄与していることが、NATURE誌に掲載され、大きな話題になった。しかしながら、我々は、代謝物(2R,6R)-HNKの抗うつ作用はR-ケタミンと比較して非常に弱く、R-ケタミン自身の抗うつ作用が重要であることを見出し、論文はBiological Psychiatry誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療抵抗性うつ病にも抗うつ作用が期待されているR-ケタミンの作用機序を解明するために、R-ケタミンあるいは抗うつ作用が弱いS-ケタミン投与後の脳組織をプロテオミクス技術で解析し、発現の異なる幾つかのタンパク候補を得た。さらに、うつ病の社会的敗北ストレスモデルを用いて、R-ケタミンあるいはS-ケタミン投与後の前頭皮質と海馬歯状回における発現の異なる遺伝子を網羅的に解析するRNA-seq解析を実施し、現在解析中である。 2016年5月にケタミンの抗うつ作用は、ケタミン自身でなく、R-ケタミンの最終代謝物(2R,6R)-hydroxynorketamine (HNK)が寄与していることが、NATURE誌に掲載された。しかしながら、我々は、代謝物(2R,6R)-HNKでなく、R-ケタミン自身の抗うつ作用が重要であることを報告し、研究成果はインパクトファクターの高いBiological Psychiatry誌にアクセプトされた。 以上のことから、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に見出したケタミン両異性体投与で異なるタンパク、遺伝子について、さらに詳細に調べて、R-ケタミンの抗うつ作用に関わる機序を明らかにする。
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