1年度目および2年度目に合成を達成したJuglorubinとその誘導体2種、Juglorescein、1'-O-Methyljuglocombin B dimethyl ester、Juglomycin CおよびDの計7種について抗菌活性およびがん細胞に対する細胞毒性を評価した。またJuglorubinの生合成について合成化学的検証を行った。 まずグラム陽性菌である枯草菌とグラム陰性菌である大腸菌に対して抗菌活性を評価したところ、1'-O-Methyljuglocombin B dimethyl esterとJuglomycin Cが枯草菌に対して強い抗菌活性を示すことを見出した。一方、大腸菌に対してはいずれの化合物も抗菌活性を示さなかった。 また1'-O-Methyljuglocombin B dimethyl esterとJuglomycin Cはがん細胞(ヒト結腸腺がん由来HCT116細胞およびヒト前骨髄性白血病細胞株HL-60)に対して強い細胞毒性を示した。興味深いことに、Juglomycin Cはがん細胞に対して強い毒性を示したのに対し、正常細胞(正常ヒト線維芽細胞MRC-5)に対する細胞毒性は弱いことが分かった。つまりJuglomycin Cはがん細胞選択的に毒性を示す可能性が示唆された。 さらにJuglorubinの生合成を化学的に検証した。昨年度の研究でJuglorubinが非酵素的に生合成される可能性を示していた。今回、全合成研究で鍵反応となったJuglomycin C誘導体の二量化反応で副生成物として生じるジアステレオマーの構造を絶対立体配置を含めて明らかにした。さらにこのジアステレオマーからJuglorubinの合成を達成し、前駆体の立体化学に関わらずJuglorubin骨格が構築できることを確認した。
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