研究課題
本研究では、磁化乱流プラズマにおいて粒子輸送と運動量輸送の相互作用を観測し、流れ場を変調することで粒子輸送の動的制御を目指している。実験は九州大学の直線プラズマ実験装置(PANTA)を用いて行い、1)バイアス電圧印加実験により流れ場を変化させ、2)粒子輸送と運動量輸送の多点同時計測可能なプローブを開発し、3)バイアス電圧を動的変化させて粒子・運動量輸送の動的応答を観測し、その因果関係を同定することを目的とする。また本研究の解析手法をトーラス装置の輸送制御実験にも応用し、直線装置とトーラス装置の相補的理解のもと研究を進めていく。平成28年度は、研究目的1)にあるバイアス電圧印加実験を行って乱流や粒子輸送の応答を観測した。PANTA装置の下流部に設置されているエンドプレートに、バイアス電圧を印加する実験を行った。バイアス電圧値がある閾値を超えるとプラズマ中心部の密度が上昇し、エッジ部の密度勾配が大きくなることが観測された。プローブを用いて乱流駆動粒子輸送を観測したところ、バイアス電圧印加により粒子束の向きが外向き(エッジ方向)から内向き(中心方向)へと変化していることが分かった。粒子束の向きの変化は、乱流の位相関係が変化することに寄ることが明らかとなった。このような位相関係の変化は乱流プラズマにおいて良く観測されており、密度径方向分布等と乱流位相のどちらが先に変化したのか、因果関係を同定することが今後の課題である。またPANTAにおいては、磁場やガス圧等により乱流の状態が変化したり、径方向・軸方向位置により異なる駆動源を持つ乱流が共存していたりすることが明らかになってきており、バイアス電圧印加実験においても外部パラメータ依存性や計測位置の増設といった事が必要となっていることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
本研究では粒子輸送と運動量輸送の干渉の因果関係を同定するために、プラズマに摂動を与えて乱流状態を変化させることが鍵となる。平成28年度はエンドプレートバイアス実験を行い、プラズマ乱流がバイアス電圧値によって変化することが分かった。また、その際に粒子輸送の向きが反転することも分かり、エンドプレートバイアスにより粒子輸送制御が可能であることが示された。この結果は査読付き論文として成果報告した。また、バイアス印加時の輸送の動的応答を観測するためには、ノイズに埋もれた揺動を観測する必要も出てくる。そこで乱流中のコヒーレントな揺動に着目して信号を重畳し、ノイズレベルを下げて揺動を抽出できる畳み込み解析を開発した。この解析法はPANTAの乱流に適応し、乱流が作り出す対流胞の非線形波を観測した(結果は査読付き論文に投稿中)。また、直線装置とトーラス装置の相補的な理解のもと輸送制御研究を進めるために、ドイツのトーラス装置、ASDEX-Uの実験に参加した。粒子と熱の輸送レベルが異なるプラズマに対し、畳込み解析を適応して突発的輸送現象のタイムスケールの定量化に成功した。これらの成果を踏まえ、当初の目標に対しておおむね順調に進展していると判断した。
今後は研究目的2)にある、粒子輸送と運動量輸送の同時計測可能なプローブを開発することである。すでにプローブ信号のノイズ成分を減らすための開発が進められている。バイアス印加時にも優位な信号が観測できるように、シールドを用いてプローブを改良できた。このような技術を駆使して粒子・運動量輸送計測プローブを開発する。また研究目的3)に向けて、バイアス電圧のモジュレーション実験を行い、最適なモジュレーション周波数や電圧値などを探求していく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Plasma and Fusion Research
巻: 12 ページ: 1201008 1-3
10.1585/pfr.12.1201008
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 85 ページ: 093501 1-4
10.7566/JPSJ.85.093501
巻: 11 ページ: 1201098 1-3
10.1585/pfr.11.1201091