研究課題
本研究は、磁化プラズマにおいて乱流が駆動する、運動量輸送と粒子輸送の相互干渉による非拡散輸送の制御を目指して、輸送干渉の物理機構を明らかにすることが目的である。研究は、九州大学の直線プラズマ装置PANTAを用いて行い、研究目的は次の3つである。(i)バイアス電圧印加実験により、外部から運動量ソースを変調させ、(ii)粒子・運動量輸送の同時計測可能なプローブを開発し、(iii)乱流と粒子・運動量輸送のダイナミクスを観測し、輸送干渉の因果関係の同定を行う。平成29年度の研究は、研究目的(ii)にある、粒子・運動量輸送の同時多点計測に向けた複合プローブを制作し、軸方向に多点設置することを行った。複合プローブは6つのタングステン電極からなり、それぞれ浮遊電位を計測している。プローブはレイノルズ応力(径方向電場揺動と方位角方向電場揺動の積)と揺動駆動フラックスを同時計測できるようになっており、バイアス実験時の計測が進められている。エンドプレートバイアス時においては、電場に変化が見られないのにも関わらず、乱流強度と粒子駆動フラックス、レイノルズ応力がそれぞれ低下するという結果となった。そこでバイアス印加時の電場が正しく計測できていない可能性を踏まえ、電場の高精度計測が可能であるエミッシブプローブの作製にも取りかかり始めている。現在順調に制作が進んでいる。また、バイアス実験を同軸円状プローブに対しても行えるように、装置を整備・設置した。2つの円状プローブに電圧を印加することで、径方向の電場、すなわち方位角方向の流れ場を制御することが目的である。外部電源とスイッチング装置の整備が整った。さらに、乱流のダイナミクス計測に向けて畳み込み解析法を開発した。この手法を駆使すれば、モジュレーション時における乱流と輸送の非線形構造を抽出することができる。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、粒子輸送と運動量輸送の干渉を観測するために、外部より運動量ソースに摂動・変調を与えるユニークな手法をとっている。前年度より進められてきたエンドプレートバイアス実験においては、電場計測の不確かさや装置の3次元性による複雑さから、乱流の変化の要因がいまいち明らかとならなかった。しかし、電場計測プローブの開発と、2次元断面内における円状バイアスプローブの設置が進められており、早急な対策を講じることが出来た。テスト実験では、新型バイアスによる流れ場の制御に成功している。さらに、ダイナミクス計測において問題となってくる、早い応答の解析手法に関しても進展が見られ、畳込み解析やテンプレート抽出法などの解析ツールの整備と、実際にプラズマデータに適応しダイナミックな非線形構造の抽出に成功している。以上の成果を踏まえると、多少の予期していない結果も得られたが、無事方向修正でき、当初の目標に対して概ね順調に進展していると判断した。
今後は研究目的(iii)にある、バイアス変調実験における乱流と粒子・運動量輸送のダイナミクスを観測することである。まず、同軸円状プローブバイアスによる運動量制御を、エミッシブプローブにより駆動されるフローを評価しする。次にバイアス電圧を掃引して、乱流と粒子・運動量輸送のダイナミクスを、畳込み解析等を用いて定量化する。バイアス電圧や掃引周波数により、各輸送の時間応答のタイムスケールが異なる場合を観測する。時間応答の違いより、輸送干渉の因果関係について考察する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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