研究課題/領域番号 |
16J00576
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
平田 剛輝 長崎大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | アリル位置換反応 / パラジウム触媒 / ホスフィン-ボラン配位子 / アリルアルコール |
研究実績の概要 |
本研究では、ルイス酸性部位としてホウ素部位を分子内に有するホスフィン化合物(ホスフィン-ボラン)を配位子として利用することで、高活性な遷移金属触媒を創製することが目的である。特に、不活性な炭素-酸素結合の切断を鍵とする触媒反応の開発を目指している。 はじめに、体系的な検討を行うために多様なホスフィン-ボラン配位子を準備し、その合成法について確立した。リンおよびホウ素上には多様な置換基を導入することに成功し、リン原子とホウ素原子を連結するリンカー部位については、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オルトフェニレン基を有するものを各種合成した。結果的に14種類の多様なホスフィン-ボラン配位子を合成し、それらを有するパラジウム触媒の触媒活性を比較検討した。 合成したホスフィン-ボラン配位子とパラジウム錯体を用いて、アリルアルコールの直接的なアリル位置換反応における触媒活性を調べた。その結果、アリール基を持つホスフィン部位と9-BBN骨格を持つホウ素部位とがエチレン鎖およびブチレン鎖で連結された配位子がアリル位アルキル化およびアミノ化反応において高い触媒活性を示した。特に、アリル位アルキル化反応ではアルキル化剤としてマロン酸エステル等の活性メチレン化合物を用いて、塩基を加えない条件下でも良好に反応が進行することが明らかとなった。 これまでの研究成果より、アリルアルコールのアリル位炭素-酸素結合を効率よく切断することのできるホスフィン-ボラン配位子の構造を明らかにした。この結果から、より不活性な構造のアリルエーテル等の炭素-酸素結合の切断に向けての重要な知見であり、さらにはπ-ベンジルパラジウムを経由するようなベンジルアルコールの炭素-酸素切断反応にも応用可能であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに多様なホスフィン-ボラン化合物の合成法を確立し、14種類のホスフィン-ボラン化合物を合成した。得られたホスフィン-ボラン化合物を配位子として用い、アリルアルコールの直接的なアリル位アミノ化反応およびアルキル化反応における触媒活性を調査した。アミノ化反応には第1級アミンおよび第2級アミンを用い、アルキル化剤には活性メチレン化合物を用いて、いずれの反応においても塩基を加えずに中性条件下で触媒反応を行った。その結果、アリル位アミノ化反応とアリル位アルキル化反応のいずれの場合にも9-BBN骨格を有するホスフィン-ボランが最適であることを明らかにした。反応溶媒等の反応条件を最適化することにより、高収率でアリル位置換生成物を得ることができた。特にアミノ化反応においては、従来法と比べて大幅な加速効果が見られた。アリルアルコールの適用範囲について調べたところ、アミノ化反応においては多様なアリルアルコールを用いることができた。また、嵩高さのために反応性が低いプレニルアルコールや第3級アリルアルコールを用いた場合にも高収率で対応する生成物を得ることができた。求核剤として用いるアミンについてはアニリン誘導体が特に高い反応性を示し、脂肪族アミンにおいても良好に反応が進行した。一方、アリル位アルキル化反応においては、α位およびβ位に置換基を導入しても反応を妨げること無く高収率で生成物が得られた。求核剤である活性メチレン化合物としてはマロン酸誘導体やβ-ケトエステル類を用いることができ、対応する生成物を高収率で得ることができた。以上のように、本研究は当初の計画通り、ホスフィン-ボラン化合物の合成法を確立し、アリルアルコールの直接的アミノ化反応およびアルキル化反応の開発まで順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、ホスフィン-ボラン配位子を用いたα-ビニル環状エーテルおよび環状アリルエーテルのアリル位置換反応へと研究を展開する。α-ビニル環状エーテルや環状アリルエーテルは、環状骨格に由来する立体障害によってπ-アリルパラジウム中間体を形成しにくい。そのため、より高活性なパラジウム触媒の開発が必要である。これまでに得られた研究成果によって、ホスフィン-ボラン配位子を有するパラジウム触媒が、アリル位置換反応に高い活性を示すことが明らかとなっており、上述したようなより高難度のアリル位置換反応への応用が期待できる。これまでに合成したホスフィン-ボラン配位子を用いて触媒反応を試み、必要に応じて新たな配位子の設計および合成を行う。 また、アリルアルコールを用いたアリル位アミノ化反応およびアルキル化反応に関しては反応中間体の特定など詳細な反応機構の解明を目指す。具体的には触媒とアリルアルコールとの化学量論反応を行い、NMR等の各種スペクトルの変化を観察することで反応中間体に関する知見を集める。 さらに、アリルアルコールにおける炭素-酸素結合の活性化法をベンジルアルコールへと拡張した、ベンジル位置換反応にも本触媒系の適用を試みる。
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