研究課題
研究目的達成のために、今年度は実験環境の整備を主軸に研究を進める計画であった。今年度はその環境整備に加えて、高圧氷の融点決定にも成功しており、研究計画を上回る成果を挙げることに成功した。アンモニア、メタンガスを極低温の液体窒素で冷却して液化させ、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)内に導入して充填する低温充填装置の構築に成功した。試料の加熱光源として、透明試料の加熱にも有効なCO2レーザーを採用した。このレーザーの使用によって試料に化学反応を起こさずに安定した高温高圧条件の生成を実現できた。試料の分解及び融解挙動の分析として、構造解析のためのラマン散乱だけでなく弾性特性を決定できるブリルアン散乱計測も採用した。分子構造と弾性特性の両方の変化を同時に追うことで、融解及び分解挙動を多角的に判断できるようになった。熱輻射計測に加えて、ラマンのストークス-アンチストークス強度比の関係を用いた温度計測法を取り入れた。この手法の導入によって室温から温度算出が可能となり、加熱された試料の熱力学経路(温度圧力条件)の詳細を正確に決定できるようになった。上記の実験装置を用いて氷の融点計測を試みた。12 GPaまでの氷を加熱した時のラマンスペクトルとブリルアンスペクトルをそれぞれ同時に取得した。ブリルアンスペクトルでは融解が観察されると同時に液体に由来するピークの出現が明瞭に見られたため、この手法によって融解を判断できることが示された。さらに、ラマンスペクトル内の並進運動モードのストークス-アンチストークス強度比から試料の温度を加熱開始から観察することに成功した。融解直前の最高温度は、よく制約された融点(680 K)と非常によく一致していた。今後より高圧下で実験を行うことで不一致を見せる融解挙動が解決され、整備した実験環境の使用により本研究の目的が達成されることが期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では天王星と海王星の深部に含まれる氷、アンモニア、メタンの高温高圧条件下における融解、分解挙動を明らかにし、氷惑星の内部構造を解明することが主目的として挙げられる。その目的達成のために、今年度は実験環境の整備を主軸に研究を進める計画であった。調査に必要な実験環境は主に以下の二つが挙げられる。(1)アンモニアやメタンなどの液体試料を封入する低温充填装置の整備。(2)試料の高温高圧条件下におけるスペクトル分析装置の整備。 今年度は上記二つの環境整備に加えて、高圧氷の融点決定に成功しため、研究計画を上回る成果を挙げることに成功している。
初年度に実験に必要なセットアップを完了できたので、アンモニアの分解及び融解挙動を開発したシステムを使って調査する。融解挙動の不一致が見られる圧力領域である20 GPa以上の融点計測を目標に実験を行う。今年度からネバダ大学ラスベガス校と、高温高圧下のメタンとケイ酸塩鉱物との反応を調べる研究を開始する。ダイヤモンドアンビルセルとCO2レーザーを用いてメタンとケイ酸塩鉱物の混合試料に高温高圧条件を生成し、ラマン散乱とX線を用いて反応の詳細を調べる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Nature Communications
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Science Advance
巻: 2 ページ: 31600157
10.1126/sciadv.1600157
Scientific Report
巻: 6 ページ: 26000
10.1038/srep26000