研究課題/領域番号 |
16J00612
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
木村 友亮 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特別研究員(PD) (50624540)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | アンモニア / 天王星 / 海王星 / ブリュアン散乱分光法 / ラマン散乱分光法 / レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル / 融解 / 高圧相転移 |
研究実績の概要 |
ブリュアン散乱及びラマン散乱分光計測に基づいたアンモニアの超イオン相の安定性と融点の実験的決定を目指した研究を行った。80 GPa、800 Kでアンモニアの弾性波速度の縦波速度成分の急激な落ち込みを発見した。これはプロトンの拡散の立ち上がりに伴う、超イオン相への一次相転移に由来すると考えられる。加えて、ブリュアン散乱スペクトル内で液体の縦波速度のピークを発見したことから、融解の発生を確認した。この手法に基づいて融点計測を行ったところ、40 GPaで融点の急激な上昇が見られた。これは、固体相(III)から超イオン相への一次相転移によってもたらされたと考えられる。40 GPaで観察された融点の急上昇は、アンモニアの融解曲線と天王星及び海王星の内部圧力温度曲線との交差をもたらし、これはアンモニアの超イオン相が氷惑星内部で安定であることを示唆する。水の超イオン相も氷惑星内部で安定であることが既に確認されているので、本研究結果と合わせて考慮すると、水とアンモニアの惑星比率で構成された混合物(水 : アンモニア = 7 : 1)は氷惑星のマントル中では超イオン相として存在していることがわかった。この超イオン状態の混合物はマントル深部で安定成層を形成し、この安定成層が天王星と海王星で観測されている多重極磁場の生成に関与している可能性が高い。今回の実験研究から、氷惑星で確認されている不可解な惑星内部磁場の形成メカニズムの解明に近づく重要な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンモニアの高温高圧実験では、融点計測のみならず、ブリュアン散乱分光計測に基づいた、超イオン相の発見とその相転移メカニズムの決定にまで成功した。これは当初の予定を上回る成果である。一方、マントル物質とケイ酸塩鉱物との化学反応を調べる実験については、優先度がアンモニアよりも下回るため着手が遅れており、まだデータ取得に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
アンモニアの高温高圧実験では、予想以上の成果をあげることに成功した。超イオン相の存在は水でも同様に予想されているため、水でも同様の実験を行い、超イオン状態を包括的に理解する研究を実施する。そして、マントル物質とケイ酸塩鉱物の化学反応を調べる研究も、同様の方法で引き続き行う。
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