本研究では、CO2レーザー加熱装置とブリュアン-ラマン散乱分光計測を組み合わせた複合計測システムを開発し、惑星内部環境下におけるアンモニアの弾性波速度計測とラマン分光分析を行った。高温高圧下のアンモニアのブリュアンスペクトル中に出現する、液体に由来する音速ピークの観察を基にして60 GPaまでのアンモニアの融点計測に成功した。約2000 K、40 GPa以上の温度圧力条件で低い音速を持つ新しい相を発見した。ラマン分析からその新しい相はイオン化していることがわかり、この相が超イオン相に相当することがわかった。超イオン相の縦波速度は液体と同等であることが示されたため、超イオン相は液体と同程度の弾性特性を持っていることがわかった。本研究で決定した融解曲線から惑星内部の温度圧力環境にアンモニアの超イオン相が存在することが明らかになった。したがって、超イオンアンモニアは天王星、海王星内部に存在しているが、この物質が液体と同等の弾性特性を持っていることから、超イオン物質は惑星深部の対流抑制に寄与していないことがわかった。氷惑星のもう一つの主要物質であるメタンは深部で水素とダイヤモンドに分解することがわかっている。この分解生成されたダイヤモンドがマントル深部に沈殿してダイナモ生成を妨げるような安定成層を形成している可能性が考えられる。このように本研究から、氷惑星の磁場生成 メカニズムと関連する、重要な内部構造が明らかになった。
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