研究実績の概要 |
本研究では,(1)覚醒度の異なるポジティブ感情が認知に与える影響の検討,(2)認知の変容によるストレス抑制効果の検討,(3)ポジティブ感情が精神的健康をもたらすメカニズムの実証と精緻化を目的としている。 現在,ポジティブ感情が精神的健康をもたらすメカニズムは実証されていない。ただし,拡張一形成理論によれば,ポジティブ感情人々の思考や認知が拡張し,肯定的な個人資源(例えば,ストレス抑制)が形成されるとされている。そこで,本研究では拡張―形成理論を元に下記の研究を遂行した。 1つ目は,覚醒度が異なるポジティブ感情が認知や思考に与える影響についての検討である。これまでポジティブ感情は,思考一行動レパートリーといった認知的な変数に影響を与えることが知られた。しかし,実験的に操作をされるのは,ポジティブ感情かネガティブ感情かといつた快の感情価の差異の検討であり,覚醒度の変化は検討されてこなかった。そこで,今年度は,実験的に喜びやリラックスといった覚醒度の異なるポジティブ感情を誘導した後に,思考―行動レパートリーを測定する課題をおこなった。結果としては,仮説どおりの結果が得られ,覚醒度が高いポジティブ感情が,思考ー行動レパートリーを増加させることを示した。 2つ目に,高覚醒のポジティブ感情が思考―行動レパートリーを増加させることが示されたため,そもそも思考―行動レパートリーが多いことが, どのようなメリットをもつのかを検討した。実験方法としては,思考―行動レパートリーを測定した後に,ストレス課題を実施した。その結果,思考―行動レパートリーが多いほど,ストレス事象を楽観的に提えることが明らかとなった。 3つ目に,拡張一形成理論の実証のために,web調査による縦断調査を実施した。
|