研究課題/領域番号 |
16J00714
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木下 拓也 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 酸・塩基付加体 / frustrated Lewis pair / カルベン / 水素活性化 / 不活性結合活性化 / 水素化 / 還元的アミノ化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ルイス酸・塩基付加体から熱刺激により発生させた高反応性分子会合体 (Frustrated Lewis Pair, FLP) による分子活性化を鍵とする触媒反応の開発である。これまでに、N-ヘテロ環状カルベンと有機ボランから形成されるルイス酸・塩基付加体から熱刺激によりFLPを発生させる手法の開発、およびFLP発生機構の解明に取り組んできた。 平成29年度は、本FLP発生手法を利用した触媒反応の開発を目指し、典型元素触媒存在下、水素を還元剤とする第一級アミンの還元的アルキル化反応の開発に取り組んだ。本反応に用いる典型元素触媒には水素を活性化可能な高い反応性と、触媒量に対して過剰量副生する水への耐性を有する必要があり、これらの両立には昨年度までに開発したFLP発生手法の利用が適すると考えた。しかし、ボランのルイス酸性度およびN-ヘテロ環状カルベンのルイス塩基性度が高すぎるために、FLP触媒が水との反応により失活し目的の反応は進行しなかった。そこで、ルイス酸・塩基の立体的・電子的チューニングを行い耐水性の高い触媒系を設計することで反応が効率良く進行することを見出した。本反応は高原子効率・低環境負荷な最も理想的なアミン合成法であり、遷移金属を用いないため生成物の単離・精製も容易である。更に本反応はカルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などを有する基質も適用可能な高い官能基許容性を有しており、複雑な分子構造を有するアミンを簡便に合成することが可能である。生成物のアミンは医薬品、農薬等の合成中間体として重要であり、本研究は学術的のみならず、産業的な見地からも意義深い。また、速度論実験による本触媒反応の反応機構研究を行い、反応機構を明らかとした。典型元素触媒による水素を還元剤とする還元的アルキル化において実験結果に基づく機構研究は例がなく、本研究は高い学術的意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、典型元素触媒存在下、水素を還元剤とする第一級アミンの還元的アルキル化反応を開発した。本反応に関して基質適用限界の解明を行い、複雑な骨格を有するアミンを単一反応容器・一段階操作にて簡便に合成可能であることを明らかとした。さらに、実験的な機構研究に基づき本反応の推定反応機構を明らかとした。これらの結果をまとめ論文を執筆、投稿し、現在査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度取り組んだ反応機構研究から推定した機構の妥当性について、計算化学的手法を用いて評価を行う。また、N-ヘテロ環状カルベンと有機ホウ素試薬から形成されるルイス酸・塩基付加体から熱刺激により発生させたFLPによる他の不活性結合の活性化を検討し、触媒反応への応用を図る。
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