研究課題/領域番号 |
16J00771
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 幸久 東京大学, 理学(系)研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 植物 / 活性酸素 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
本研究は、植物の免疫応答に関わるレドックスシグナル伝達経路を明らかにするため、活性酸素生成酵素RBOHDに着目し、その制御機構を明らかにする。本年度は、RBOHDの制御因子を同定するため、シロイヌナズナ形質転換体 (rbohD変異体/pRBOHD:3×FLAG-RBOHD) に、病原菌由来物質 (PAMP) である翻訳伸長因子EF-tu (elf18)、及び鞭毛タンパク質 (flg22) を処理し、共免疫沈降法によってFLAG-RBOHD複合体を精製した。精製したFLAG-RBOHD複合体はオービトラップ質量分析計で解析し、RBOHD結合候補タンパク質を同定した。これら結合候補因子の中からRBOHDの制御因子を同定するため、結合候補因子をタバコ葉に一過的発現させ、flg22誘導性の活性酸素を測定した。その結果、flg22誘導性の活性酸素生成に変化を及ぼす3つの制御因子を同定した。本年度は、制御因子の1つであるロイシンリッチリピート受容体型キナーゼに着目し、その機能解析を行った。この因子はRBOHDだけでなく、受容体EFRに対する共免疫沈降においても検出された。これらの結果は、同定した受容体型キナーゼがRBOHD-EFR複合体の一部であることを示す。よって、REAL1 (RBOHD-EFR Associated LRR-RLK1) と命名した。REAL1の機能を明らかにするため、REAL1内在性プロモーターでREAL1-GFPをタバコ葉に一過的発現させたところ、REAL1は細胞膜に局在した。また、PAMP処理によるREAL1の制御機構を調べたところ、REAL1遺伝子発現はflg22、及びelf18処理により有意に亢進した。更に、REAL1はflg22処理によってリン酸化された。これらの結果は、PAMP処理によりREAL1が転写、及び翻訳後修飾レベルで制御されていることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、活性酸素生成に変化を及ぼすRBOHD制御因子を同定することができた。更に、同定した制御因子の一つであるロイシンリッチリピート受容体型キナーゼREAL1に着目し、(1) REAL1が細胞膜に局在すること、PAMP処理によって (2) REAL1の転写量が亢進すること、及び (3) REAL1がリン酸化されることを明らかにした。現在は、REAL1のシロイヌナズナ遺伝子欠損体を用いて、PAMP、及び傷害関連分子パターン (DAMP) 誘導性の活性酸素生成やMAPK活性化、及び病原細菌に対する抵抗性を評価している。よって今後の研究も順調に進展するものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、REAL1がどのようにPAMP応答を制御しているのか、その分子メカニズムを解明する。初めに、酵母ツーハイブリッド法、in vitro 結合アッセイ、及び共免疫沈降法を用いてREAL1がRBOHDを含むどのPAMP受容体複合体構成因子と結合するか明らかにする。更に、REAL1のPAMP応答における機能を明らかにするため、現在解析しているREAL1のシロイヌナズナ遺伝子欠損体に加え、相補系統、及び過剰発現体に対してPAMP、及びDAMP誘導性の活性酸素生成やMAPK活性化、病原細菌に対する抵抗性、及びPAMP受容体複合体構成因子のタンパク質の量や活性を評価する。また、in vitro キナーゼアッセイによりREAL1のリン酸化活性を調べるとともに、PAMP処理後にREAL1をリン酸化するキナーゼの同定を行う。
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