振盪培養中のフラスコ内の気相環境のガス成分の変化が、培養微生物群集や単一菌株に及ぼす影響はほとんど研究されておらず、未解明である。平成29年度は、申請者が発見した新奇な現象(振盪フラスコ培養中の間欠的な気相環境への操作が集積される培養微生物群集に影響を及ぼす)を対象に、平成28年度に実施した課題①【新奇な現象のメカニズムの解析】と課題②【単一菌を用いた振盪フラスコ培養法の解析】に対して詳細な解析を行い、課題③【Automatic Aeration Flask System(AAFS)の改良】を行い、以下の点を明らかにした。 課題①に対して:従来法では、設定培養温度と同じ至適培養温度である微生物が優先化するが、振盪フラスコ培養中に間歇的な通気を行い一時的な溶存CO2濃度の低下をもたらすことで、至適培養温度が低い微生物が優先化することが明らかとなった。これらの微生物種は、本来の至適培養温度下と異なる性質を有することが示唆され、近年、改めて定義された微生物種が含まれていた。 課題②に対して:坂口フラスコと三角フラスコを用いた振盪培養結果から、気相部のCO2を除去することで、従来法と比べてEscherichia coliの増殖が改善することが明らかとなった。また、Saccharomyces cerevisiaeの増殖は改善できなかったが、S. cerevisiaeを用いてフラスコ気相部のCO2濃度やO2濃度が鉛直方向に濃度勾配が形成していることを見出した。 課題③に対して:予めCO2ガスと新鮮空気を混合ガス容器内に充填させ、コンプレッサーの代わりに混合ガス容器をAAFSに接続し、フラスコ気相部に一定速度で通気できる定速制御型と、コンプレッサーの代わりに純CO2ガスボンベをAAFSに接続し、フラスコ気相部への通気口の上流に設けた電磁弁とCDMSSをPID制御で接続した変速フィードバック型を開発した。
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